BCAAサプリメントの効果や飲み方を、研究エビデンスをもとにして、初心者向けに解説しました。
結論から言うと、「BCAA」とは以下のような効果があるアミノ酸です。
以上のことから、男女関係なく、スポーツをする人全般に向いているサプリメントだと言えます。
ということでこの記事では、そもそも 「アミノ酸って何?」という話から、BCAAの効果や飲み方を詳しく、なるべく簡単にお話していきます。
BCAAとは何なのか
ざっくり言ってしまえば、BCAAとはアミノ酸の仲間です。
といっても、「じゃあアミノ酸ってそもそも何?」と疑問に思う人は多いはず。
ということで、まずはアミノ酸について見ていきましょう。
アミノ酸とは、タンパク質を構成する成分
アミノ酸とは、タンパク質を作っている小さな粒のこと。
「アミノ酸の集まり = タンパク質」といってもいいでしょう。
「アミノ酸」が集まって「タンパク質」になり、筋肉や皮膚・髪の毛・骨など、体を作る材料となります。
アミノ酸とタンパク質の関係は、よく「ぶどう」に例えられます。
ぶどうの粒(アミノ酸)が集まって、ブドウの房(タンパク質)になる。そんなイメージをすると理解しやすいかと思います。
タンパク質を構成するアミノ酸は、20種類存在します。このうち、1つでも欠けるとタンパク質が合成されません。
ここでは、筋肉を作るにはタンパク質が必要であり、そのタンパク質はアミノ酸という小さな粒で構成されているということを理解していただければと思います。
マックスくん
次は、アミノ酸の種類について、詳しく見ていきましょう。
必須アミノ酸と非必須アミノ酸
タンパク質を構成する20種類のアミノ酸は、大きく2つに分けることができます。
それは、「必須アミノ酸」と「非必須アミノ酸」です。
「必須アミノ酸」
「必須アミノ酸」は9種類存在し、体内で作ることができないため、食事やサプリメントで摂取する必要があります。肉や魚、卵、プロテインなどにバランス良く含まれます。なお、「EAAサプリ」というのは、必須アミノ酸サプリのことをいいます。
関連記事:【レビュー】パープルラース(Purple Wraath)はEAAサプリ断トツでおすすめ
「非必須アミノ酸」
残り11種類のアミノ酸は「非必須アミノ酸」と呼ばれ、体内に糖質や脂質などの材料があれば合成できます。
- 必須アミノ酸:体内で作れない
- 非必須アミノ酸:体内で作れる
必須アミノ酸と非必須アミノ酸の種類は、以下のとおりです。
- イソロイシン
- ロイシン
- リジン
- メチオニン
- フェニルアラニン
- トレオニン(スレオニン)
- トリプトファン
- バリン
- ヒスチジン
- チロシン
- システイン
- アスパラギン酸
- アスパラギン
- セリン
- グルタミン酸
- グルタミン
- プロリン
- グリシン
- アラニン
- アルギニン
必須アミノ酸のうち、以下の3種類をまとめて「BCAA」と呼びます。
- バリン
- ロイシン
- イソロイシン
BCAAとは「Branched Chain Amino Acids(ブランチド・チェーン・アミノ・アシッド)」の略。日本語では「分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸」という意味です。
マックスくん
BCAAの構造を詳しく知りたいマニアックな方は、以下の記事を読んでみるといいかもしれません。
さて、BCAAが何なのかわかったところで、一旦まとめます。
- アミノ酸はタンパク質を構成する材料
- タンパク質を合成するには、20種類のアミノ酸が必要
- アミノ酸は、必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分けられる
- 必須アミノ酸のうち、バリン・ロイシン・イソロイシンをまとめてBCAAと呼ぶ
BCAAとプロテインの違い。まったくの別物です
ここまで「BCAAとは一体何なのか」ということを解説してきました。
もしかしたら、「肉や魚、プロテインにもBCAAが含まれているんだから、BCAAサプリを摂取する必要はないんじゃないか?」と思った人もいるかもしれません。
でも、そうではないんです。
BCAAサプリメントを摂取することで、血中のBCAA濃度が急激に高まり、この後に解説する様々な作用が表れるのです。
肉や魚、プロテインの場合は、徐々に消化・吸収されていくため、BCAA濃度が急に高くなることはありません。BCAAサプリを摂取した時と同じ効果は期待できないのです。
ということで、ここからはBCAAの効果について見ていきましょう!
BCAAサプリメントの効果(メリット・デメリット)
BCAAサプリを摂取するメリット、デメリットは以下のとおりです。
- プロテインに比べると高額
それでは、メリットについて解説していきます!
【BCAAのメリット】
筋肉合成のスイッチを入れる
先ほど説明したとおり、BCAAは以下の3つのアミノ酸で構成されています。
- バリン
- ロイシン
- イソロイシン
このうち、ロイシンに強力な筋肉合成の効果があることがわかっています。
仕組みを解説すると非常にややこしくなるので、とてもざっくりお話しますね。
現時点でわかっている、タンパク質が作られる仕組みは次のような流れになっています。
- DNAがタンパク質を作る方法が書かれた設計図を持っている
- タンパク質を作る工場が設計図をコピーしてきて、材料を集めてタンパク質を作る
- 「mTOR(エムトール)」という成分が、タンパク質を作る工場がうまく働くように刺激を送る
- その「mTOR」をロイシンが活性化する
かなりシンプルに書きましたが、これでもまだややこしいかもしれませんね・・・。
もっと噛み砕いてお話しします。
タンパク質を作る工場には「リボソーム」という名前がついています。リボソームはただの工場なので、タンパク質の作り方を知りません。
それでもタンパク質を作る役目があるリボソームは、タンパク質の作り方が書かれた設計図を「ある場所」からコピーしてきて、タンパク質を作ります。
その「ある場所」というのが、DNAです。そう、みなさんも聞いたことがあるあの「DNA」ですね。
ただ、リボソーム(工場)も万能ではなく、忙しさでてんやわんやになって、うまく機能しないことがあります。
うまく機能していないのをまとめるのが、mTORと呼ばれるタンパク質です。
例えるなら、工場現場のリーダーみたいな存在です。
そのmTORが、リボソーム(工場)に対して、「おーい、がんがんタンパク質作ってよ〜」と促すのです。
でも、そのmTORも万能ではないので、うまく働かないこともあります。そんなmTORに「リーダーなんだから、しっかり皆を動かしてくれよ」と依頼をするのが、ロイシンなんです。
いわば、工場現場の親方みたいなものでしょうか。
参考
筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学日経Gooday(グッデイ)
まとめると、ロイシンがmTORを活性化して、mTORがリボソーム(タンパク質を作る工場)をもっと働けと促す。そしてタンパク質が作られる。
だから、ロイシンは筋肉合成のスイッチを押すということなんですね。
ただし、筋肉の合成が促進されるからといって、ロイシンばかりを摂取してもそれほど意味はありません。
ロイシンはあくまでも筋肉合成のスイッチを押すだけで、筋肉合成に必要な材料(必須アミノ酸)が体内に揃っていなければ筋肉は作られません。
そのため、食事やプロテインなど、タンパク質を多く含む食品を摂ることが重要になってくるのです。
【BCAAのメリット】
筋肉の分解を抑制する
先ほども解説したとおり、mTORを活性化することにより、タンパク質の合成が促進されます。
そのとき、自動的にタンパク質の分解が抑制されることもわかっています。
よって、BCAAは筋肉の合成を促進するだけでなく、分解を抑制するとも言えるのです。
こういった理由から、筋トレ愛好家にBCAAを摂取する人が非常に多いんですね。
【BCAAのメリット】
筋肉痛を軽くする
BCAAサプリメントを摂取すると、筋肉痛を軽くすることができます。これは私が実際に長年使用して、よく感じていることです。
運動習慣を持たない成人女性が、トレーニング直前に5gのBCAAを摂取してスクワットをおこなったところ、筋肉痛が軽減したという研究があります。
参考
スポーツ医学的観点からのアミノ酸機能化学と生物 Vol. 52(pdf)
筋肉痛が軽減されるということは、「疲労を軽減する」とも言い換えられますね。
きつい練習が毎日続く学生、試合シーズンで疲労を溜めたくないスポーツ選手、仕事に疲れを残したくない社会人トレーニーなど、いろんな人が恩恵を受けられるのがBCAAです。
【BCAAのメリット】
脂肪燃焼のサポート
BCAAには、体脂肪の燃焼をサポートする効果もあります。
ダルビッシュ有選手のトレーナーである、山本義徳氏の著書『タンパク質とアミノ酸 後編』によると、40歳から59歳の男女4429名を対象にした調査では、BCAA摂取量が多いと過体重や肥満になりにくいことが示されています。
さらに、満腹を感じさせるホルモン「レプチン」の働きを調整することによって、食欲を抑える効果も報告されています。
BCAAは、体重を落としたい人の味方にもなってくれるということですね。
【BCAAのメリット】
集中力が向上する
BCAAの摂取で、運動中の集中力が上がることがわかっています。
では、そもそも何が集中力を妨げるのか?
それは、疲労です。
疲労には2種類あります。
- 抹消疲労:身体の疲労
- 中枢性疲労:脳の疲労
抹消疲労は、筋肉が収縮することなどによって生じる、身体の疲労です。
中枢性疲労は、脳が疲労して、頭や身体がだるくなったりすることを指します。
BCAAは、中枢性疲労を軽減させ、集中力を向上させることがわかっています。
では、なぜ運動中に中枢性疲労が起きるのでしょうか?
仕組みはこうです。
運動中、血液中にトリプトファンというアミノ酸が増えます。
増えすぎたトリプトファンが脳内に入り、セロトニンという物質に変わります。
このセロトニンが蓄積することにより、脳が疲労し、集中力が落ちるのです。
これが、中枢性疲労が発生する、現時点で有力な仮説です。
BCAAは、脳内にトリプトファンが侵入するのを防ぐ作用があります。
つまり正確にいうと、脳の疲労を防ぐことで、集中力が向上するってことなんですね。
参考
運動・栄養と中枢性疲労発生機構京都大学大学院農学研究科(pdf)
マックスくん
【BCAAのメリット】
スタミナが向上する
BCAAの摂取は、運動のパフォーマンスも向上させます。
とある被験者グループに、次のような実験をしました。
- バイクを疲労困憊になるまで漕がせ、記録を取った
- その後、2gのBCAAが入った500mlの飲料を8日間摂取させた
- 運動の30分前にBCAAの顆粒を10g飲ませ、1と同じ運動をさせた
実験の結果、BCAA摂取前よりも、BCAA摂取後のほうがスタミナが向上したことがわかりました。摂取前よりも、摂取後のほうが、疲労困憊になるまでの運動時間が長かったのです。
参考
BCAA含有飲料摂取が漸増運動負荷中の生体に及ぼす影響について日本生理人類学会誌(pdf)
BCAAは身体を動かすエネルギーにもなります。
バスケットやサッカー、ラグビーなど、長い時間動き続けるタイプの運動をする人は絶対に摂取しておきたいところです。
BCAAの効果が感じられない場合はどうする?
「初めてBCAAを飲んだけど、あまり何も感じなかった」という人も中にはいるかもしれません。もしかすると、摂取量が少なかった可能性があります。
2〜3gほどのBCAAでは私もあまり感じませんが、5〜10gほど摂取すると、BCAAの効果がグッと感じられると思います(集中力やスタミナなど)
経験上、起床時や空腹時のときに摂取すると吸収が早く、効果が感じやすくなります。
BCAAとプロテインの違い
「BCAAとプロテインは同じなのか」という疑問を持つ人が多いのですが、BCAAはプロテインの代わりにはなりません。
BCAAを摂取したからといって、必ずしも筋肉が成長するわけではないのです。
「必須アミノ酸と非必須アミノ酸」の部分でもお話したとおり、BCAAサプリメントを摂取すると、血液中のBCAA濃度が急に上がります。
この急な変化によって、これまで解説してきたようなBCAAの効果が表れるのです。
BCAAはあくまでも筋肉合成のスイッチを押すだけで、体内に必須アミノ酸が十分になければ筋肉は作られません。
よって、食事やプロテインなどから必須アミノ酸を摂取する必要があります。
マックスくん
BCAAの効果についてまとめます。
- 筋肉合成のスイッチを入れる
- 筋肉の分解を抑制する
- 筋肉痛を軽くする
- 脂肪燃焼のサポート
- 集中力が向上する
- スタミナが向上する
- BCAAはプロテインの代わりにはならない
BCAAサプリメントの飲み方
ここでは、BCAAを摂取すべき人・飲み方・摂取タイミングなどについて、具体例を交えながら解説します。
スポーツをするすべての人にBCAAは有効
基本的に、スポーツをするすべての人に、BCAAの摂取をオススメします。
BCAAの効果を見てみると、筋トレを頻繁におこなう人に向いているような印象を持つかもしれませんが、通常のスポーツでもBCAAは役に立ちます。
年齢や性別関係なく摂取できますし、副作用についての研究結果は見たことがないので心配する必要もなさそうです。
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- 球技
- 陸上競技
- 格闘技
- 筋トレ
筋トレ系のサプリメントには、ボディビルダーなど激しく鍛える人に特化する商品もあります。
ですが、BCAAに関しては、どんなタイプのスポーツをしていても有効です。
BCAAの摂取量:体重×0.08〜0.12gが目安
1回あたりのBCAA摂取量は、体重の0.08〜0.12gを目安にしましょう。体重が60kgの人なら、約6gということですね。
とはいえ、BCAAを飲むたびに、何gかを測るのも面倒です。大雑把に5〜10gほど摂取するとよいでしょう。
なお、BCAAは過剰摂取の心配をする必要はそれほどありません。ですが、BCAAに限らず、どんな食品でも摂りすぎると何かしらの影響は出てきます。身体に何か異常が出たらすぐに摂取を中止してください。
マックス
BCAAの摂取方法
BCAAは、以下のタイミングで摂取すると効果的です。
- 起床直後(空腹で)
- 運動の20〜30分前
- 運動中
- 運動直後
マックス
起床後のBCAA摂取はオススメ
起床後、身体はある種の”飢餓状態”になっています。6〜7時間の睡眠後は、体内に栄養が少ない状態になっているからです。
体内に栄養が少ないとどうなるか?
身体は「ヤバイ、エネルギーの源がない!ええい、筋肉から持ってきちゃおう…!」と、筋肉を分解してしまうのです。
このように、筋肉が分解されやすい状態を「カタボリック」と呼びます。
軽い運動をしているくらいの人ならこだわる必要はありません。ですが、アスリートやボディビルダーはカタボリックの状態を作ってはいけません。筋肉が減ってしまうからです。
つまり、カタボリック対策として、起床後のBCAA摂取が有効ということなんですね。
マックスくん
トレーニング前・中・後のタイミングは、絶対に外してはいけない
BCAAをもっとも摂取すべきタイミングは、運動前後です。
どんなスポーツをしている人でも、このタイミングだけは逃さないようにしましょう。
- 運動の20〜30分前:5g
- 運動中:5〜10g
- 運動直後:5g(こだわる人向け)
BCAAを摂取してから約15〜30分で、先ほど解説したBCAAの効果が表れ始めます。
よって、運動の20〜30分前にはBCAAを摂取するのがオススメです。
運動中は、5〜10gのBCAAパウダーを、水や糖質ドリンクなどに溶かして摂取しましょう。
1日1〜2時間ほどがっつりトレーニングするような人は、運動直後にもBCAAを摂ることをオススメします。経験上、筋肉痛や疲労の回復が早くなります。
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※注意:寝る前にBCAAを摂取すると、睡眠が浅くなる
BCAAを就寝直前に飲むと、睡眠が浅くなることがわかっています。
「BCAAが集中力を向上させる」でも解説したとおり、BCAAはトリプトファンが脳内に侵入するのを防ぎます。
集中力は上がるのですが、同時に頭が覚醒してしまい、身体はリラックスしなくなります。
よって、寝る前にBCAAを摂取するのはオススメしません。
参考
BCAA’s do prevents sleep apnea in normal adultsHuntington College of Health Sciences(pdf)
トレーニングをしない日のBCAA摂取は必要か?
トレーニングが休みの日でも、筋肉の分解を防ぐため、起床後のBCAAだけは摂取しておくことをオススメします。
ジョギングなど軽い運動をするだけなら必要はありませんが、よく筋トレをする人やアスリートは摂取しておきましょう。
また、ダイエット中などで、起床後に空腹のまま有酸素運動をおこなう場合も同様です。5〜10gほどのBCAAを摂取し、筋肉の分解を抑えるようにしましょう。
BCAAの飲み方についてまとめます。
- どんなスポーツをする人にもBCAAは有効
- 過剰摂取の心配はない
- 体重×0.08〜0.12gが摂取の目安量
- 運動前後のタイミングがベスト
- 寝る前には摂取しない
まとめ
今回解説したことをまとめます。
- 必須アミノ酸のうち、バリン・ロイシン・イソロイシンをまとめてBCAAと呼ぶ
- BCAAは筋肉合成を促進し、筋肉痛を軽くする
- BCAAは脂肪燃焼のサポートをする
- BCAAを摂取すると集中力やスタミナが増す
- 運動をするすべての人にBCAAはオススメ
- BCAAは運動前や運動中をメインに摂取する
- 1回あたり5〜10gほどを摂取する
マックスくん
なお、オススメのBCAAサプリはこちらで詳しくレビューをしているので、ぜひ読んでみてくださいね。