筋トレ種目の組み方は、目的によって多岐にわたります。
その中でも「筋肉を大きくするため」という目的に沿った、現代でもっともスタンダードな方法が「POF法」です。
アーノルドシュワルツネッガーがボディビル現役時代に採用していたことでも知られ、日本のボディビルダーにも人気の方法です。
たとえ筋トレ経験が浅くても、筋肉モリモリな体を目指すなら知っていても損ではありません。具体的なメニュー構成例も記載しているため、次からの筋トレにすぐ役立つはずです。
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POF法は現代筋トレ法の主流
POF法とは、刺激が異なる種目を組み合わせて筋トレすることで、効率よく鍛えられる方法です。「Position of Flexion」の略称で、そのまま「ピーオーエフ」と読みます。
アメリカで歴史あるボディビル雑誌「アイアンマンマガジン」の編集者「スティーブホールマン氏」がPOF法を提唱しました。アーノルドシュワルツネッガーが取り入れていたことで有名になり、他のボディビルダーも使い始めたのです。
日本のボディビルダーも、POF法をもとに種目を組み立てる傾向にあり、JBBFの現日本チャンピオン「鈴木雅選手」も取り入れています(参考:鈴木雅パーフェクトブック)
多くのボディビルダーがPOF法を取り入れていることから、ボディビル界ではもはや当たり前な雰囲気さえあります。
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POFはボディビル的な体を作りたい人におすすめ
POF方はボディビルダーのような、丸々した大きい体を作りたい人に向いている方法です。
ボディビルダーほどまではいかなくとも、効率よくかっこいい体を作りたい人にも適しています。
逆に、運動パフォーマンスの向上を目的とするアスリートは導入を検討する必要があります(理由は後述)。
POFの具体的な方法:3つのジャンルの種目を組み合わせる
具体的には、以下の3つの種類のエクササイズを組み合わせます。
- ミッドレンジ種目
- ストレッチ種目
- コントラクト種目
これは何か。たとえば、具体的な種目を当てはめるとこうなります。
- ミッドレンジ種目:ベンチプレス、スクワットなど
- ストレッチ種目:インクラインダンベルカールなど
- コントラクト種目:ケーブルカールなど
なんとなくわかるでしょうか?
これらはすべて、動作の中で筋肉へ負荷がかかるポイントが違うのです。
種目 | 負荷が強くなる場所 |
ミッドレンジ種目 | 動作の中間 |
ストレッチ種目 | 筋肉が伸びたとき |
コントラクト種目 | 筋肉が縮んだとき |
ベンチプレスでは、バーベルを押し始めてから、押し切るまでの中盤で、もっとも負荷が高くなります。
インクラインダンベルカールだと、ダンベルを下ろしたとき。コンセントレーションカールでは、腕を曲げきったときに負荷がもっとも高くなります。
ミッドレンジ、ストレッチ、コントラクト。
これら3つのエクササイズを組み合わせることで、より多角的に筋肉へ刺激を与えるのがPOF法です。
それでは、それぞれの種目についてもう少し補足していきます。
1.ミッドレンジ種目
種目 |
負荷が強くなる場所
|
ミッドレンジ種目 | 動作の中間 |
ストレッチ種目 | 筋肉が伸びたとき |
コントラクト種目 | 筋肉が縮んだとき |
動作の中間あたりで負荷がもっとも高くなるのが「ミッドレンジ種目」です。
ほとんどのコンパウンド種目が、ミッドレンジ種目にあたります。コンパウンド種目とは複合関節種目とも呼ばれ、「いろんな関節をたくさん使っておこなう筋トレ種目」のことをいいます。
コンパウンド種目では重たいウェイトを扱えるため、筋肉への刺激が多く、ボディビル界では「大きさを作る基礎種目」と位置づけられています。
いろんな関節を同時に動かすため軸がブレやすく、難易度は高いです。
しかし、初心者や筋肉を大きくしたい人は、もっとも時間を割くべき種目です。
ミッドレンジ種目例
- ベンチプレス
- インクラインベンチプレス
- デッドリフト
- バーベルロウ
- スクワット
- 懸垂
など
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レップ数目安:3〜12回
- 筋肥大が目的:8〜12回で限界が来る重さ(最大反復回数)
- 筋力アップが目的:3〜6回(1〜2レップの余力を残す)
レップ数は、以上のように設定するのが基本です。
経験が少ない場合は10回から始め、慣れてきたら重量を増やしてレップ数を減らすといいでしょう。
ただ、バーベルロウなどの種目によっては、レップ数が低すぎると動作が不安定になり、対象筋に効かなくなることもあります。
ここは無難に、どの種目も6〜10回で設定しておけばまず間違いないでしょう。
2.ストレッチ種目
種目 |
負荷が強くなる場所
|
ミッドレンジ種目 | 動作の中間 |
ストレッチ種目 | 筋肉が伸びたとき |
コントラクト種目 | 筋肉が縮んだとき |
「ストレッチ種目」とは、筋肉が伸びた時点でもっとも負荷がかかる種目のこと。伸ばされた状態の筋肉は刺激されやすく、筋肉に損傷がおこりやすいことから、筋肥大に有効だとされています。筋肉が引き伸ばされる感覚が強いため、他の種目よりも痛みを感じる傾向にあります。
ストレッチ種目の代表例といえば、「ダンベルフライ」です。
アーノルドシュワルツネッガーが、大胸筋を大きくするためにフル活用していたことで有名です。
ストレッチ種目例
- ダンベルフライ
- インクラインダンベルカール
- シシースクワット
- スティッフレッグドデッドリフト
- インクラインダンベルサイドレイズ
など
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レップ数目安:8〜12回
重たすぎるウェイトでは、ストレッチ性の刺激が筋肉にかかりにくくなる場合があり、関節への負担も大きくなります。そのため、中程度のウェイトを使用し、8〜12回の回数を目安におこないます。
3.コントラクト種目
種目 |
負荷が強くなる場所
|
ミッドレンジ種目 | 動作の中間 |
ストレッチ種目 | 筋肉が伸びたとき |
コントラクト種目 | 筋肉が縮んだとき |
筋肉が収縮し、短くなった時点で、もっとも負荷がかかる種目を「コントラクト種目」といいます。
(コントラクト Contract = 筋肉を収縮させるという意味)
筋肉が張る感覚(パンプ)を感じやすく、「筋トレしてる感」がわかりやすい種目です。
おもにケーブルやマシンを使った種目が多く、自宅でトレーニングしている場合はチューブを使えばコントラクトな刺激を強めることができます。
コントラクト種目例
- ペックデック
- レッグエクステンション
- ケーブルサイドレイズ
- コンセントレーションカール
- ケーブルカール
など
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レップ数目安:10〜20回
コントラクト種目では、比較的軽めの重量を扱います。筋肉が縮みきった時点での収縮を重視するため、重たすぎるウェイトだと、完全に収縮するまで持ち上げられない場合があるからです。上級者でも、回数は10〜20回と、多めに設定する傾向にあります。
筋肉が完全に収縮したとき、自分でもギュッと力を入れるのがとても重要です。
それぞれをどのくらい組み合わせたらいいのか?
ここまではPOF法の基本を解説してきました。
3つの種類の種目を組み合わせるのがPOF法で、今のスタンダードな筋トレ方法です。
ここでは、実際にPOF法を使ったメニュー構成について詳しく見ていきます。
コンパウンド種目メインのメニュー構成を
基本的にはコンパウンド種目をメインにおこない、重量やレップ数の増加を記録します。
コンパウンド種目の重量、もしくはレップ数が伸びていたら、トレーニングは順調に進んでいると判断してOKです。
部位にもよりますが、最低でもコンパウンドを2種目、ストレッチ種目とコントラクト種目を1つずつおこなうといいでしょう。
- コンパウンド種目:2
- ストレッチ種目:1
- コントラクト種目:1
「初級者のレベルではなく、中級者を目指している」という人は、コンパウンド種目を3つに増やすか、ストレッチ種目を2つにします。たとえば、それまでデッドリフトをやっていたら、懸垂とバーベルロウを追加するなどです。
アスリートは必ずしもPOF法を採用する必要はない
もしあなたがアスリートの場合、「POF法はあくまでもボディビル的なトレーニング」という点に留意しておきましょう。年間でピリオダイゼーションを組み、筋肥大を目的としてトレーニングをする期間にはいいかもしれません。
しかし、スポーツにもよりますが、基本的にアスリートの場合、筋量を増やすことだけがトレーニングではありません。ボディビル的な筋トレは機能性を考慮していないため、スポーツが下手になる可能性だってあります
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各部位の参考POFメニュー
「POF法を学んだとはいえ、実際に自分でメニューを組むとなるとやっぱりどうしていいかわからない」。そんな人のために、各部位のメニュー構成例をつくりました。
トレーニーが実際に使っている種目ばかりなので、自分でまだメニュー構成ができない場合、このまま使ってみてください。
胸の場合
- コンパウンド種目
- ベンチプレス(バーベル)、4セット、8回
- インクラインベンチプレス(ダンベル)、4セット、8回
- ストレッチ種目
- ダンベルフライ、3セット、10回
- コントラクト種目
- ケーブルクロスオーバー(ケーブルフライ)、3セット、12回
背中
- コンパウンド種目
- デッドリフト、4セット、8回
- バーベルロウ、4セット、8回
- ストレッチ種目
- ダンベル・プルオーバー、3セット、10回
- コントラクト種目
- ラットプルダウン、3セット、12回
脚
- コンパウンド種目
- スクワット、4セット、8回
- レッグプレス、4セット、8回
- ストレッチ種目
- シシースクワット、3セット、20回
- コントラクト種目
- レッグエクステンション、3セット、12回
肩
- コンパウンド種目
- バーベルショルダープレス、4セット、8回
- ダンベルショルダープレス、3セット、10回
- ストレッチ種目
- インクラインダンベルサイドレイズ、3セット、10回
- コントラクト種目
- ケーブルサイドレイズ、3セット、12回
- リバースペックデック、3セット、12回
上腕二頭筋
- コンパウンド種目
- バーベルカール、3セット、10回
- ストレッチ種目
- インクラインカール、3セット、10回
- コントラクト種目
- ケーブルカール、3セット、12回
上腕三頭筋
- コンパウンド種目
- ナローグリップベンチプレス、3セット、8回
- ストレッチ種目
- ケーブルオーバーヘッドプレス、3セット、10回
- コントラクト種目
- ケーブルエクステンション、3セット、12回
Q&A
コンパウンド種目だけでメニューを組んだらダメ?
A. 問題ないが、追い込みきれないことも
POF法を採用しなければいけないルールはありません。
コンパウンド種目は基本的な大きさをつけるのに最適なので、初心者の場合はコンパウンド種目だけでメニューを構成してもいいくらいです。
しかし、それだけで完全に追い込めるか、といえばそうでもありません。
ベンチプレスをたくさんしたとしても、肩と腕が先に疲労し、胸はまだ余力を残している場合があります。ダンベルフライやペックデックなど、肩や腕をあまり使わず、大胸筋を追い込める種目を追加するのが有効です。
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コンパウンド種目が苦手。他の種目をメインにしてもいい?
A. 問題ありません
たとえば、ベンチプレスが苦手で、ダンベルフライが得意な場合、ダンベルフライをメイン種目にしてもOKです。セット数を5〜6ほどに増やして追い込みましょう。特にベンチプレス(バーベル)は得手不得手で分かれるので、ボディビル上級者でもベンチプレスをしない人はたくさんいます。
ボディメイクは、重量を上げる競技ではないため、種目にこだわる必要はありません。もちろん練習は必要ですが、苦手なものは苦手と割り切り、自分に合った種目を追求することをおすすめします。
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コンパウンド種目を第一種目にしたほうがいいか?
A. ジムの混雑状況に左右されるので気にしない
「コンパウンド種目は体力のある1番最初におこなう」は、筋トレ界では定説となっていますが、ジムが混んでいる場合は不可能ですよね。最初にコンパウンド種目ができたら理想的ですが、無理な場合は前後しても構いません。
ボディビルダーでも、いつもより使用重量は下がるものの、関節への負担が減るため、最後にコンパウンド種目をおこなう人もいます。
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ボディビル的なメニューを参考にしたい
A. ボディビルチャンピオンから学ぼう
ボディビル日本チャンピオン、鈴木雅選手の「鈴木雅 パーフェクトブック」には、POF法で構成されたメニューとその理論が詳しく解説されています。ボディビル的な体になりたい人に限らず、効率よくメニューを構成したい人は一読してみてください。
以上、「ボディビルダーが採用する、効率よく筋肉をつける筋トレメニューの組み方」でした。
分割法の種類
トレーニング分割方法については、以下の記事を参考に組んでみてください。
- 筋トレの分割法:週3日する場合のパターン3つと種目例
- 筋トレの分割法:週4日する場合のパターン6つと種目例
- 筋トレの分割法:週5分割のパターンと種目例
- 筋トレ分割法:週6日のルーティンパターン
- 筋トレ分割法:週7日のルーティンパターン3つ
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