ベンチプレスの元日本王者(2012年、2017年)、「山下保樹(やましたやすき)選手」に、ベンチプレスの基本やフォームについてお聞きしました。
やすき選手は、大阪(弁天町)でパワーリフティングジムを経営しています。
ベンチプレス初心者の方はもちろん、中級者の方でも参考にしていただければ幸いです!
- 肩甲骨を寄せて胸を張る
- ひたすらブリッジを組め
- アゴは胸につける
- 1番高いところへバーベルを降ろす
- 基本的にはまっすぐ握る
- バーベルの81cmラインに人差し指を置く
- 手首は寝かせると肩甲骨が寄りやすくなる
- 足は広げて踏ん張り、真上に向かって蹴るイメージをする
- ウェイトリフティングシューズか、足袋靴を履く
- ベンチプレスを強くするのはベンチプレス
山下保樹選手について
一言でいうと、ベンチプレスが信じられないほど強い選手です。
高校からベンチプレス競技を始めてすぐに頭角を現し、アジア選手権など、数々の大会で優勝。2017年日本ベンチプレス選手権(105kg級)で優勝し、2019年に日本で開催される「世界ベンチプレス選手権」に出場予定です。
- 出身:大阪
- 身長:167cm
- 体重:オフ101〜102kg,オン104kg
- トレーニング歴:17才からパワーリフティングを始め、現在はベンチプレスに専念
- パワーリフティングジム経営(2018年11月〜)
- 最高記録:フルギア317.5kg/ノーギア212.5kg(2018年10月時点)
大会実績は無限にあるため、一部を紹介します。
- 2011年:アジアベンチプレス(ジュニア)2位
- 2012年:全日本ベンチプレス 93kg級優勝
- 2013年:アジアベンチプレス選手権 93kg級 最年少(21才)で優勝、MVP受賞
- 2017年:全日本ベンチプレス選手権 105kg級 優勝/世界ベンチプレス選手権 7位
- 2018年:全日本ベンチプレス選手権 105kg級 2位
- 2019年:世界ベンチプレス選手権 105kg級 出場予定(千葉県開催)
その他実績多数
やすき選手に聞く、ベンチプレスの基本的なフォーム
ポイント1:肩甲骨を寄せる
ーーベンチプレスの基本である「肩甲骨の寄せ」について教えてください。
やすき選手:初心者や、まだまだベンチプレスに慣れていない人の場合、やはり肩甲骨を寄せることが大切です。これができないと何もできないので。
具体的には、肩甲骨寄せて、肘を曲げてバーベルを降ろして、押す。この一連の動作が基本ですね。肩甲骨を寄せると胸が前に出て、腕や肩ではなく、胸や背中を使って押すことができます。
(肩甲骨をしっかり寄せる)
ーーなるほど。やっぱり肩甲骨は寄せるのが基本と。
やすき選手:ただ、上級者になると少し変わってきます。僕らの場合、最初は肩甲骨はあまり寄せず、バーベルをおろしていく中で肩甲骨を寄せていきます。これは今でも難しいんですが、これができたら週6日でベンチプレスができますよ。
ーー週6日も!?すごい・・・。動きの中で肩甲骨を寄せると、何が違うんですか?
やすき選手:動きの中で肩甲骨を寄せていくことによって、体にかかる負荷を分散することができるんです。例えば、普通にベンチプレスをする時、胸に50%、両腕に25%、肩に25%の負荷がかかっているとするとします。
ところが、動きの中で肩甲骨を寄せていく方法だと、身体全体に5%ずつ負荷を分散する感じで、ひとつの部位にかかる負荷を減らすことができるんです。「なんでそんなにトレーニング量を増やすことができるの?」とよく聞かれるんですが、このやり方を使ってるから週6日でもベンチプレスができるんです。
ーーすごすぎて参考になりません(笑)。初心者や苦手な人はどうしたらいいですか?
やすき選手:さっきも言ったとおり、やっぱりバーベルを握る前から肩甲骨を寄せて、胸をしっかり張って、肘を曲げて押すことです。肩甲骨を寄せながら降ろすのは僕でもむずかしいので、今の段階では考えなくてもいいです。
あと、バーベルを押すときはアゴを胸につけてくださいね。
(アゴを胸につける)
そして、ブリッジをしてできる、体の1番高い位置へバーベルを降ろして、一気に挙げます。
(1番高いところへバーベルを降ろす)
(別の角度から)
- 初心者や苦手な人は、まずはしっかり肩甲骨を寄せるだけでいい
- 上級者は肩甲骨を動きの中で寄せていく
- アゴは胸につける(つかなくてもつける意識で)
- 1番高いところへバーベルを降ろす
ポイント2:ブリッジ、ブリッジ、ブリッジ!
ーーブリッジについてはどうですか?
やすき選手:ブリッジもめちゃくちゃ大切ですね。ベンチプレスでは、いかに高いブリッジを組めるかが本当に重要です。高いブリッジをするとバーベルと胸の距離が近くなるので、より重たいベンチを上げやすくなります。
ーー「体が固くてブリッジができない」という人も多くいますが、どうしたらいいですか?
やすき選手:体が固いなりにブリッジをやり続けてほしいですね。続けていれば必ず柔らかくなってくるので。高いブリッジを作って、”窮屈感”を出すんです。言っておきますが、ブリッジはめちゃくちゃキツイですよ。しんどいものなんです。でもそこから逃げたらダメです。
ブリッジは特にテクニックどうこうではなく、もう本当にやり込むしかありません。ベンチに寝たら、足で踏ん張って、限界までブリッジを高くあげて、お尻をベンチ台につける。毎回のセットで、自分ができる最大のブリッジを作ってください。
それを続けることで、徐々に高いブリッジが作れるようになりますよ。初心者で「ベンチプレスで肩が痛くなる」という方は、たいていブリッジができていないことが多いような気がしますね。
(やすき選手のとてつもなく高いブリッジ)
やすき選手:このように、目一杯ブリッジを作ることを意識してみてください。
ーー(逆Vの字やん・・・)
- 体が固くても、やり込むことで高いブリッジができるようになる
ポイント3:バーベルの握り方、握る場所
ーーバーベルの握り方はどうしたらいいですか?
やすき選手:人それぞれの重心によって握り方が変わってきます。手首をまっすぐにして握る人もいれば、手首を内側に傾けて(前腕を回内)握る人もいますね。どちらが良い悪いではなく、どちらも試してみて自分に合ったものを選ぶことをおすすめします。
ただ、ボディメイクを目的とするのであれば、基本的にまっすぐ握っていれば特に問題はないかと思います。僕のところにパーソナルトレーニングを受けに来てくれたら、もっと細かくアドバイスして、その人にあった握り方も教えることができますよ。というか、究極的には見てみないとわかりません。
(手首はまっすぐに握る)
ーーたしかに、ベンチプレッサーを見てもみなさん握り方が違いますよね。握る場所はどうしていますか?
やすき選手:ベンチプレス競技の場合、バーベルの81cmラインに指がかかるように握らないとルール違反になります。おすすめは、81cmのラインに人差し指がくるように握ることです。その方がバーベルを動かす距離が短くなるので、効率的に上げることができるんですよ。
(81cmのラインに人差し指をかける)
やすき選手:たまに、ボディメイクだとサムレスで握る人がいますが、今後扱う重量を増やす方向で考えてるなら、やっぱりサムアラウンドに変えたほうがいいと思います。 ウェイトが胸に落ちでもしたら大変なことになりますから。ちなみに、サムレスグリップはベンチプレス競技だとルールで禁止されています。
(筆者の場合、それまで81cmラインに小指を合わせてナローグリップでベンチプレスをしていたが、人差し指をかけるようにしてから胸への感覚が良くなった気がする)
- まっすぐ握るのが基本
- 81cmのラインに人差し指がかかるようにする
- サムアラウンドで握る
ポイント4:手首の角度は?
ーー手首の角度はどうしていますか?寝かせたり、まっすぐにしたりする人がいるようですが。
やすき選手:手首は寝かせてください。手首を寝かせた方がベンチプレスがやりやすくなりますよ。
(手首は寝かせる)
ーーでも、手首を寝かせると怪我しやすくなりませんか?
やすき選手:最初は痛いかもしれません。でも、慣れてくると手首を寝かせた方が、肩甲骨が動きやすくなるので、ベンチプレスがスムーズになるんですよ。
実際にやってみましょう。 手首をまっすぐにしたまま肩甲骨を寄せてみてください。次に手首を寝かせて肩甲骨寄せてみてください。こっちの方が肩甲骨がはるかに寄せやすいですよね?
(手首は寝かせて肩甲骨を寄せる)
(筆者もやってみたが、手首を寝かせた方が肩甲骨が寄せやすくなり、胸が張るようになった)
やすき選手:ボディメイクだと手首がまっすぐの人が多いみたいですけど、寝かせるほうもぜひ試してみてほしいですね。胸に効く感覚がよくなると思いますよ。
ーーベンチプレッサーって、ベンチプレスをするとき胸に効く感覚はあるんですか?
やすき選手:もちろんありますよ。むしろ、胸の中でも、”この部分を使って挙げている”という意識がないと挙がらないんじゃないかなと個人的には思っています。
- 手首を寝かせると肩甲骨が寄りやすくなり、胸が張る
- 向き不向きがあるのでどちらも試してみよう
ポイント5:足の使い方
ーー足の使い方はどうしたらいいですか?
やすき選手:基本的に、足は閉じずに、広げて踏ん張ったほうがいいと思います。ガニ股になる感じで。ただ、これもやっぱり究極的にはその人の重心によりますね。正解はないので、広げてみたり、閉じ気味にしてみたりして、自分が一番踏ん張れるポジションを探すといいと思います。
(足は広げて踏ん張る)
ーーどんなイメージで踏ん張っていますか?
やすき選手:今は、足を天井に向かっていけるイメージで踏ん張っています。というのもベンチプレス競技のマットが少し滑りやすいんですよ。だから、前方に蹴るイメージでやるとフォームがずれてしまうので、 真上に向かって蹴っています。ただし、これはまだ練習段階ですね。
あとは、滑らないシューズを選ぶことも大切だと思います。ベンチプレス競技ではウェイトリフティングシューズを履く人、足袋靴を履く人に分かれます。
ーーやすき選手は何を履いていますか?
僕はこれですね。ウェイトリフティングシューズを履いてます。
(やすき選手のシューズ)
Adidas 競技用シューズ・靴 Powerlift 3.1
ーーあと、「足袋靴(たびぐつ)」というのは?
やすき選手:こんな感じの、工事現場とかで履くようなシューズです。
やすき選手:一般的なトレーニングシューズは、クッションが入ってるから筋トレには不向きだと思います。これだとクッションはないし、裏がゴムになってるから滑らないのでベンチプレッサーはよく使ってますね。ベンチプレスだけじゃなくて、デッドリフトやスクワットにも使えますよ。
ーーどっちを選んだほうがいいという基準はありますか?
やすき選手:これも個人の重心によって決まるんですが、どちらも試してみて、自分にあったほうを選ぶのがいいと思います。やっぱり、最終的には自分の感覚なので。ただ、足袋靴は安いからそっちから試してみるのもいいんじゃないですかね。
- 足は開くのが基本
- いろいろ試して、もっとも力が出るポジションを見つけよう
- 天井に向かって蹴るイメージを持とう
- クッション性のあるトレーニングシューズはNG
- ウェイトリフティングシューズか、足袋靴を履くのがおすすめ
ベンチプレスを強くしたい人へのメッセージ
ーー最後に、ベンチプレスを強くしたい人へメッセージをお願いします。
やすき選手:とにかくシャフト(バーベル)を握ってください。よく「ベンチプレスをするにはどんな補助種目がいいか」と聞かれるんですが、やっぱりベンチプレスを強くするのは、基本的にはベンチプレスだと思います。もちろん、足上げベンチプレスやトライセップスプレスダウンも効果的ですが、最終的にはベンチプレスです。
僕も最初は60kgしか挙がりませんでした。でも、それこそ1日6時間とかやり込んで、ここまで来れてると思います。週1回のトレーニングでは足りません。本当に強くしたいなら最低でも週4回はしてほしいですね。
あと、体を大きくしたいなら、BIG3をやり込むのがなんだかんだで効果的だと思います。スクワット、デッドリフト、ベンチプレスをやり込むだけでも体は本当に大きくなりますから、迷ったらあれこれ悩まずに、BIG3に立ち返ってみるといいんじゃないですかね。
僕のジムに来てもらえたらアドバイスさせていただきますし、強くなるためのステップをすべて伝えますよ!一緒にベンチプレスをやりましょう!
ーーありがとうございました!
まとめ
やすき選手に教えてもらったことをまとめます。
- 肩甲骨を寄せて胸を張る
- ひたすらブリッジを組め
- アゴは胸につける
- 1番高いところへバーベルを降ろす
- 基本的にはまっすぐ握る
- バーベルの81cmラインに人差し指を置く
- 手首は寝かせると肩甲骨が寄りやすくなる
- 足は広げて踏ん張り、真上に向かって蹴るイメージをする
- ウェイトリフティングシューズか、足袋靴を履く
- ベンチプレスを強くするのはベンチプレス
「うーん、やっぱり文字だけじゃわからない・・・」という方は、もし関西に住んでいるなら、やすき選手のパーソナルトレーニングを受けてみてはいかがでしょうか?
関東在住の私の友人は「やすきジムへの取材記事」を読み、大阪出張の際にやすき選手のパーソナルトレーニングを受ける予定だそうです。
やすき選手が運営する「やすきジム」
- 住所:〒552-0003 大阪府大阪市港区磯路3丁目14-24 太田マンション1階
- 最寄り駅:大阪環状線「弁天町」、地下鉄中央線「弁天町」より徒歩約10分
- URL:https://8sukigym.com/
- ジム近くにコインパーキングあり
- メールパーソナルトレーニング受付中(人数制限あり)
この記事を読んで、「もっとこんなことが知りたい!」「ベンチプレスをもっと強くしたい」と思った方は、やすきジムへぜひ足を運んでみてください。私も実際にパーソナルトレーニングを受けましたが、1時間で劇的に変わりました。
もし、あなたが一人で「全然強くならない…」と悩んでいるなら、やすき選手が3秒で解決してくれるかもしれません。
関西に住んでいない場合は、メールで指導を受けることもできます。やすきジムのホームページをチェックしてみてください。
やすきジムを取材し、パーソナルトレーニングを受けた様子はコチラ。