スクワットとレッグプレス、どちらの種目を選ぶべきなのでしょうか?
両エクササイズをおこない、ホルモンの分泌量を比較した実験があります。
結論からいうと、「スクワットのほうが、トレーニング中から後にかけてテストステロン値が高かった」ことがわかりました。
「テストステロン」とは、筋肉を成長させるホルモンのこと。分泌量が多いほど、筋肉が発達しやすいと言われています。
つまり、どちらかを選べと言われたら、レッグプレスよりもスクワットのほうが脚を強化するのに効率的ということです。
とはいえ、スクワットにはデメリット、レッグプレスにはメリットがそれぞれあります。
実際、脚が太い人は、両方のエクササイズを採用している場合がほとんどです。
この記事では、実験の詳細をもとに、スクワット・レッグプレスの利点について考えていきます。
実験目的
「フリーウェイトのほうが、マシントレーニングよりも多くの筋肉が使われる」のは、すでに別の研究により明らかになっています。
「それじゃあ、『ホルモンの分泌』という視点から、フリーウェイトとマシントレーニングを比較したらどうなるんだ?」という疑問を解決するためにおこなったのが、今回の実験です。
被験者
10人のトレーニング経験者を対象に、実験がおこなわれました。
被験者の詳細は次のとおりです。
- 年齢:21〜31歳
- 身長:172〜186cm
- 体重:74〜94kg
- 最低でも週2回のトレーニングを6ヶ月以上続けている
- スクワットを頻繁におこなっている
- 健康的で、身体的な異常なし
- スクワットで深くしゃがめる
- レッグプレスでお尻が浮かない
また、実験にともない、以下の3つの制約もありました。
- アルコールの摂取禁止
- 実験当日から48時間以内のトレーニングを禁止
- 実験前日、当日朝の性行為を禁止
実験方法
- 期間:4週間
- 1、2週目でスクワットとレッグプレスを練習し、1RMを計測
- 1回のトレーニングにつき、スクワットかレッグプレスのどちらか1種目をおこなった
- 3、4週目でスクワットもしくはレッグプレスを実行した
種目内容
- 6セット、10レップのスクワット、レッグプレスをそれぞれおこなう
- スクワットはバーベルを首の後ろにかつぐ「バックスクワット」を選択
- レッグプレスは「45度レッグプレス」を選択
- 1RMの80%の重量を使用
- 休憩時間:2分
- 10レップに到達できなくなったら、補助者が助ける。その後はウェイトを減らし、自力で10レップできる重量に変更する
1RMの80%を10レップ、しかも6セットという、やったことがある人ならわかる、地獄のようなエクササイズです。普通に吐きそう。
1RM:1回だけできる重さのこと。スクワット100kgを1回だけできるなら、1RMと表現します。この場合、1RMの80%の重量は80kgです。
計測方法
次の4つのタイミングで、テストステロン、成長ホルモン、コルチゾールの値を計測しました。
- ウォームアップ時
- エクササイズ直後
- エクササイズ15分後
- エクササイズ30分後
計測結果を見る前に、ホルモンについて、少し補足しておきます。
テストステロン:「筋肉を成長する男性ホルモン」の一種です。筋トレの実験では、テストステロンの値(レベル)を計測し、より高い数値が出ると「筋肉がより作られやすい」と結論づけをすることが多いです。
成長ホルモン:筋肉を成長させるホルモンとして昔は有名でしたが、最近では「(体内で分泌される)成長ホルモンって筋肥大と関係ないんじゃない?」という声も増えてきており、議論になっています。ただし、脂肪燃焼効果が認められています(参考)
コルチゾール:空腹や激しい筋トレなどで強いストレスを感じたときに分泌されるホルモン。大きな特徴は、筋肉を分解する作用がある点(参考)。身体の機能として当然の働きをしているのに、トレーニーからはあまり好かれていない可哀想なホルモン。
※心拍数と乳酸値も計測しているのですが、今回は割愛します。
実験結果
スクワットグループで、すべてのホルモンレベルが高かったという結果に。
- テストステロン:エクササイズ直後と、15分後のテストステロンレベルがスクワットをしたときのほうが高かった。30分後はほぼ同じ
- 成長ホルモン:エクササイズ直後、15分後、30分後と、スクワットグループがはるかに高かった
- コルチゾール:スクワットグループがはるかに高い
すべてのホルモン分泌量において、スクワットのほうがはるかに高い数値を示しました。
この研究結果を見る限りでは、「スクワットのほうが筋肥大には有効」ということが言えそうです。
ただし、コルチゾールの値も高くなるため、グルタミンやビタミンC(*)を摂取するなどして、筋肉の分解を最小限に抑える工夫もしなければいけません。
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スクワットのメリット、デメリット
さて、ここで両エクササイズのメリット、デメリットを見ていきましょう。
メリット
- 身体能力向上、バルクアップ
- ダイエット
- 下半身全体を鍛えられる
- バランスを取るためのコア(腹筋や背中)も鍛えられる
デメリット
- ケガの可能性がある
- フォームや動作の習得が難しい
- 意識しなければいけないポイントが数多くある
やはり「エクササイズの王様」、得られるメリットは計り知れません。
スポーツにしろ、ダイエットにしろ、スクワットさえやっていれば間違えることはないかと思います。
ただ、優秀なトレーナーがついていない限り、フォームの習得には時間がかかります。
バーベルを高くかつぐ「ハイバー」、低めにかつぐ「ローバー」など、バーベルの位置によって股関節や上半身の角度が変わったりするので、レッグプレスに比べると難易度ははるかに高いと言えます。
腰への負担も大きいため、ケガの可能性も高くなります。
レッグプレスのメリット、デメリット
メリット
- 動作が簡単。脚で押すだけ
- 高重量系エクササイズから、パンプ系エクササイズなど広範囲に適応
- 怪我しにくい
- 足の幅を自由にアレンジでき、脚の筋肉の中でも特定の部位を集中的に鍛えられる
デメリット
- 今回紹介した研究を考えると、筋肥大効果はスクワットよりは低い
- 頭が下にあるため血圧が高くなりやすい
- 運動の動きに直結しない
レッグプレスのメリットは、とにかく動作が簡単なこと。初心者でもすぐにコツを掴めます。
上半身が固定されているため、脚以外の筋肉でバランスを取る必要がなく、ケガの可能性も低いです。
重たいウェイトも扱いやすく、レップ数を多くしてパンプ系エクササイズに変更することも容易。
足幅も簡単に変えられるため、「脚の内側を重視するなら足幅を広く」「外側をメインにしたいなら足幅をせまく」など、スクワットでやるとコツが掴みにくいテクニックも、レッグプレスだと経験者じゃなくてもできます。
ただし、運動に直結する動きではないため、スポーツ選手はやはりスクワットのほうが有効だと言えるでしょう。
できる限りスクワットを優先し、レッグプレスは補助的におこなう
今回の実験を見て、結局どうすればいいのか、考えてみました。
- ケガや身体的な障害などがない限り、スクワットを優先する
- ボディメイクをする場合、補助的にレッグプレスをするとさらに有効
- リハビリではレッグプレスのほうが安全
フリーウェイトのほうが筋活動が活発になり、ホルモン系の分泌も多いということから、脚を太く強くしたいならスクワットを優先したほうがいいかもしれません。
身体能力、心肺機能の向上を期待できることから、スポーツ目的の場合はなおさらスクワットが有効です。
また、成長ホルモンには脂肪燃焼効果もあるため、ダイエットにも向いています。
脚を太くしたいという場合は、スクワットの後に補助的にレッグプレスで追い込むのも選択肢の1つ。
事実、脚が太い人はスクワットだけではなく、レッグプレスも採用していることがほとんどです。腰の筋肉が張るため、脚に余力があってもスクワットができなくなってしまいます。
ただ、腰が痛いなどの理由でスクワットができない場合は、無理しないこと。
レッグプレスでもテストステロンは分泌されるので、効果がないというわけでは決してありません。レッグプレスで極太の脚を作り上げた人は数多くいます。
ケガや病気から復帰したばかり、体力に自信がないという場合は、レッグプレスから始めて、慣れたらスクワットに移行すればいいでしょう。