サプリメントメーカーで働いていた経験をもとに、必須アミノ酸サプリメント「EAA」について、エビデンスを用いてなるべくわかりやすく解説します。
- EAAとは必須アミノ酸のこと
- EAAは筋肉を作るのに欠かせない材料
- タンパク質の合成促進が科学的に証明されている
- BCAAとは似ているようでまったく異なる
- コストが高いのでサプリ初心者は無理して買う必要はない
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EAAとは「必須アミノ酸」のこと
EAAとは、Essential Amino Acids(エッセンシャル・アミノ・アシッズ)の略。日本語で「必須アミノ酸」といいます。
必須アミノ酸は、次の9つのアミノ酸で構成されています。
- ヒスチジン
- ロイシン
- バリン
- トリプトファン
- リジン
- スレオニン
- フェニルアラニン
- メチオニン
- イソロイシン
必須アミノ酸は、タンパク質をつくるための重要な材料です。
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必須アミノ酸(EAA)はタンパク質の材料
わたしたちの身体は、ほとんどがタンパク質と水でできています。そのタンパク質を構成しているのが、20種類のアミノ酸です。このどれかひとつでも欠けると、タンパク質を合成できません。
アミノ酸は、9種類の「必須アミノ酸」と、11種類の「非必須アミノ酸」に分けらます。
- ヒスチジン
- ロイシン
- バリン
- トリプトファン
- リジン
- スレオニン
- フェニルアラニン
- メチオニン
- イソロイシン
- チロシン
- システイン
- アスパラギン酸
- アスパラギン
- セリン
- グルタミン酸
- グルタミン
- プロリン
- グリシン
- アラニン
- アルギニン(小児は必須)
このうち、必須アミノ酸は体内で作られないため(作れたとしてもごくわずか)、摂取する必要があります。とはいえ、肉や魚など、動物性タンパク質に多く含まれているため、普段から摂取している栄養素でもあります。
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エビデンスで証明されたEAAの科学的効果
「必須アミノ酸(EAA)を摂取することで、タンパク質の合成が促進された」という内容の研究は数多くあります。
筋肉の成長を促進する
・EAAとアルギニンの摂取で除脂肪体重が増加
- 12人の高齢者(女性7人、男性5人)が、EAAとアルギニンの混合物11gを、食事と摂取
- 1日2回の摂取を16週間続けた
- 12週目のLBMの平均増加は約1kg、16週目は0.6kg
- 下半身の筋力は平均で22%増加
- 除脂肪体重、筋力、身体機能が改善が見られた
Effect of Amino Acid Supplementation on Muscle Mass, Strength and Physical Function in Elderly
・12週間のEAA摂取で筋肉量、筋力にプラスの影響
- 60〜69歳の男女38人
- 筋肉量や筋力の向上が見られた
- 疲労回復に大きな効果はなかった
・EAAがタンパク質合成を促した
- 8人が最大心拍数の60%で60分関のサイクリング
- 運動中にEAA10gを摂取
- 1つのグループはロイシンが3.5g、もう1つはロイシンが1.87g
- EAAが筋合成を促し、かつロイシンが多いほうがさらに筋合成が促された
・EAAが年齢に関係なくタンパク質合成を促進
Anabolic signaling deficits underlie amino acid resistance of wasting, aging muscle
・高齢者の長時間の安静時でも筋肉の異化(分解)を減少させた
・ロイシンがタンパク質合成のスイッチに
必須アミノ酸は、それぞれ単体で摂取してもそれぞれ違う効果があります。たとえば、「ロイシン」はタンパク質合成の強いトリガーとなることで有名です。
Leucine regulates translation initiation of protein synthesis in skeletal muscle after exercise.
Branched-chain amino acids activate key enzymes in protein synthesis after physical exercise.
回復の促進
EAAはタンパク質合成のほかにも、「トレーニング後にEAAを摂取すると回復を促進した」という研究結果もあります。
睡眠改善
必須アミノ酸に含まれる「トリプトファン」は、脳内に入ると「セロトニン」という物質に変わり、睡眠を改善することがわかっています。
Updates on Nutraceutical Sleep Therapeutics and Investigational Research
副作用の心配はなし
今回紹介している研究結果、どれにも副作用は認められていません。
EAAとBCAAの違い
EAAは、9つの必須アミノ酸を指します。
BCAAは、その必須アミノ酸のうち、次の3つのアミノ酸を取り出したものです。
- バリン
- ロイシン
- イソロイシン
効果の違い:EAAとBCAA、どっちが良いの?
EAAとBCAAは、似ているようで効果が違うので、目的によってどちらを使うか決めるといいでしょう。
・BCAAはパフォーマンスアップ目的
BCAAは、どちらかといえば運動パフォーマンスのアップが期待できます。一時的な筋力アップや、スタミナ増強など。筋肉痛をやわらげることも知られています。
・EAAは効率的に筋肉を作る目的で
より効率的に筋肉を成長させたいなら、EAAが最適です。原則、9つの必須アミノ酸が揃わなければ、筋肉の材料にはならないためです。
BCAAについては「研究で証明された、BCAAの効果6つ」にてエビデンスつきでくわしくお話しています。
・予算があるなら、どちらも摂取していい
実際、ボディビル上級者は、トレーニング中はBCAAを摂取して、それ以外ではEAAを摂取するなどして使い分けています。
筆者の個人的な意見でいうと、もし私が予算を気にせずサプリメントを飲めるお金持ちなら、EAAとBCAAどちらも摂取するでしょう。
EAA、BCAAどちらかだけを選ぶなら?
どうしても「どちらかだけ」を選ぶなら、BCAAの成分であるバリン、ロイシン、イソロイシンも摂取できる、EAAのほうが効率が良いでしょう。
EAAの飲み方と摂取タイミング
基本的な飲み方
いつ摂取しても構いせんが、基本的には
・トレーニング前
・トレーニング中
・トレーニング後
などに水分と摂取します。
参考までに、MPNの「EAA9」の使用方法は、「1回につきスプーン1杯(5〜10g)を目安に直接口に入れて水などで飲んでください」と記載があります。
関連:必須アミノ酸サプリ「MPN EAA9」レビュー:こだわり溢れる、ハイクオリティな国産EAA
・実験では10g前後の使用が多い
実際の研究でも1日10gくらいの摂取が使われることが多いです。細かく計算したい場合、体重10kgにつき、1〜1.5gのEAAを摂取するといいでしょう。
Clinical use of amino acids as dietary supplement: pros and cons
例:70kgの場合 7〜10.5gのEAAを摂取
糖質とEAAを混ぜて摂取すると効果アップ
トレーニング中の糖質ドリンクとEAAを組み合わせて摂取することで、タンパク質合成が多く増えたという研究があります。
ボディビル界では有名な研究であり、スタンダードな手法です。
トレーニング中に、フルーツジュースやスポーツドリンク、マルトデキストリンやCCDを摂取しているなら、それにEAAを追加するだけでいいということです。
関連:筋トレのスタミナ切れ対策には糖質ドリンク!グリコ「CCD」がおすすめ
ボディビルダーはどのように飲んでいる?
筆者のボディビルの師匠に、EAAの摂取方法を聞いてみました。その師匠は、JBBFという日本最大のボディビル団体で全国でも上位に入るほどの選手です。
聞くところによると、仕事の合間にEAAを摂取して、血中のアミノ酸濃度を一定にする努力をしているとのことでした。
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EAAとプロテインは混ぜてもいいか?
もちろん、同時に摂取しても構いません。
しかし、基本的には使い分けたほうがいいでしょう。
トレーニング直前、中、直後は胃にあまり負担をかけないため、より吸収されやすいEAAを摂取します。
プロテインは吸収されるのに60〜90分ほどかかるので、飲むのならトレーニング1時間前や、食事でタンパク質が十分に補えないときに摂取します。
プレワークアウトサプリと併用してもいいか?
プレワークアウトサプリとの併用はとくに問題ありません。
ただ、プレワークアウトサプリにもEAAが入っている場合、成分がかぶってしまうため、ちょっぴりもったいないかもしれません。
EAAの摂取は必須なのか。プロテインだけじゃダメ?
EAAがおすすめなのは、より筋肉をつけたいアスリートや、ボディビルをしている、いわば「究極的な人」です。栄養摂取にとことんこだわりたい人ですね。もし筆者が、身体が資本のアスリートであれば、間違いなく毎日摂取するでしょう。
しかし、EAAの問題点としては、コストが高いことがあげられます。筋トレ初心者にとってはハードルが高く感じるでしょう。予算がきびしい場合、無理に使う必要はありません。EAAを摂取しなくても体は大きくなります。もっとも大切なのはいつだって食事です。