「筋肉を大きくするには速筋を鍛えれば良い」
一度は聞いたことがあると思います。
実際、速筋は比較的大きな筋線維で、
的確な刺激を与えればかなりの筋肥大が見込める線維です。
では、その速筋に
どんな刺激を与えれば良いのか?
どんなことをすればその筋線維は太くなるのか?
ちょっとだけ難しいかも知れないけど、筋肉を大きくするには理解しておいて損はないでしょう。
そもそも筋線維とは何か?
ここでワンステップ戻り、筋線維ってどんなものなの?というところを見ていきます。
すこし生理学的な知識になりますが、筋肉がどう収縮するかをイメージできるようになると、違った視点でトレーニングが見えてきます。
すべて筋肉は、筋線維の固まりでできています。
筋線維は、さらに筋原線維(きんげんせんい)というまたさらに線維が何千と固まってできています。
1本1本のパスタが集まっているとイメージするとわかりやすいかも知れません。
参照:アロマセラピストへの道
さらにそのパスタ1本を細かく見ていくと、筋節(きんせつ)という細かくて短い単位で構成されています。
イメージで言うとこんな感じ↓
ーーーーーーーーーーーーー
一つ一つの単位(筋節)が繋がって、1本の筋原線維になっているということです。(実際には途切れていませんが)
さらに、その筋節は、アクチンとミオシンという物質を含みます。この名前は聞いたことがあるかも知れませんね。
これが交差することによって、筋収縮が起こる仕組みになっています。
面白いしわかりやすい画像を見つけました↓
参照:ニヤッとする話 : 我ら妄想族(毒にも薬にもならない話4)
そして、筋収縮に必要なのがグリコーゲン(筋肉内にある炭水化物のこと)や、クレアチンだったりするわけです。
なので、わたしはトレーニング中にはグリコのCCDドリンク(炭水化物ドリンク)や、クレアボルブラック(クレアチンなど)を飲むようにしています。
この筋収縮にさらに負荷を加えてやると、アクチンとミオシンはもっと強い収縮を生み出そうとするので、太くなっていくと考えられています。
つまり、筋肥大とは専門的に言うと、
「筋線維を構成している、筋節の数を増加させて、アクチンとミオシンのサイズを大きくする※」
ことを言います。
そして、その増加が起こりやすいと言われている筋線維が、速筋と言われているんですね。
ただ、速筋にも種類があり、筋肥大しやすいタイプの速筋というものが存在すると言われています。
体を大きくしたい人はこのタイプの速筋に刺激を与える方法でトレーニングをしてやればいいというわけです。
※筋線維の周りにある、「筋形質」が筋肥大には重要という説もあります。結局のところ、まだ完全には解明されてないのが現状です。
筋線維:3つの種類
筋線維のタイプと言うと難しく聞こえるかもしれませんが、一度理解してしまえばカンタンです。
速筋線維:タイプ2B(ⅡB)
いきなり結論に入りますが、筋肉を大きくしたいなら、速筋線維タイプ2Bを太くすることを目的にレップ数を設定しましょう。
特徴
・4〜10レップで反応する
・大きな運動神経に支配される
・筋線維が大きい
・筋肥大の可能性が高い
・糖をエネルギーとして使う
タイプ2Bは、ボディビルダー、フィジーカー、体を良くしたいトレーニーすべてが刺激を与えるべきポイント。
といっても、この筋線維だけをピンポイントで狙うのは、月に石を投げて当てようとするのと同じ。不可能です。
ではどうするか?
既述したとおり、4〜10レップでレップ数を設定するようにします。ただし、このタイプの線維はセット後半のつらいときにやっと最大発揮されるような筋肉なので、追い込むことは必須になります。さらに高重量を扱うことも必要です(あくまでも正しいフォームで)。
トレーニング方法については後術を参考にしてください。
速筋線維:タイプ2A(ⅡA)
タイプ2Aも速筋ですが、タイプ2Bと大きく違うのは反応するレップ数です。この線維は12レップ以上のトレーニングに反応すると言われています。セット序盤のまだ余裕がある状態でもこの線維がメインに収縮していると言われています。なので、軽い重量でいくらやっていても、結局は追い込めないと筋肥大は見込めないということです。
トレーニングに慣れている人ほど、追い込む=オールアウトするのが必要なんですね。
・特徴
・12レップ以上のトレーニングに反応する
・脂肪と糖質をエネルギーとして使う
・筋線維はタイプ2Bよりも大きくない
・筋肥大の可能性はそこまで高くない
さらにこの線維については、肥大の可能性はあまり高くないとまで言われています。
一般的に、速筋はスプリンターなどの短時間に筋力を発揮する選手に多くみられるそうです。
遅筋線維(タイプ1)
これについても聞いたことがあるかと思いますので、さらっといきます。
・特徴
・小さな運動単位に支配される
・血液の供給が良い
・疲労に強く、脂肪をエネルギーにする(燃焼する)
・小さなサイズの筋線維
・あまり筋肥大しない
要点だけ言うと、これを鍛えようとしても筋肥大は見込めないということです。
このブログを見ているみなさんの目的にはそぐわないですね。
筋肥大のためのトレーニング方法
さて、トレーニングの話にいきましょう。
本日読んだことを踏まえて、どんなふうにレップ数を設定していけば良いのか?どんなトレーニングをすべきか?ということを考えていきます。
【ポイント1】オススメのレップ数は?
結論からいうと、私のオススメはすべて10レップに設定することです。
10レップとなると、ある程度のヘビーウェイトを扱うことになるでしょう。
「設定する」というのは、10レップ目が限界で、11レップ目はできないという状態になるウェイトを扱うということです。
いわゆるオールアウト(完全疲労)ですね。この状態になることを毎回のセットで目指します。
もっと細かく言うと、「10レップがまあまあできる」という感覚では全然オールアウトになっていません。最初の5レップくらいまではタイプ2Aの筋線維が主に働いているので、この時点でやめてしまうと筋肥大の可能性は少なくなります。
コツとしては、
8レップ目が限界と【思う】ウェイトを使うこと。
何故かと言うと、人間は肉体的限界よりも、心理的限界が先にくるからです。
8レップ目で自分が限界と思っていても、実は肉体的にはあともうちょっと出来るんですね。
筋肥大にはこの考え方が非常に大切です。
この最後の2レップが非常にきついですが、
終盤のレップでタイプ2Bの筋線維が動員されてくるので、筋肥大が期待できます。
ここで気をつけるべきなのは、チーティングをせずに、できるだけ正しい(ストリクトな)フォームで挙上すること。
チーティングは完全に上級者向けテクニックです。確かにやったった感はあるのですが、自分が完全に筋肉をコントロールできていないのなら、正しいフォームを最後まで続けましょう。
ちなみにこのレップ数はどの部位に置いても同じです。胸、背中、脚はもちろん、腕やカーフなどもそうです。
※実際には毎回きちんと10RMを選択できるわけではないので、12RMとかになってしまうこともあります。要するに、10RM前後でオールアウトの状態になったら良いということです。
【ポイント2】筋肉に負荷を乗せ続ける
まずはこのジェイ・カトラーのダンベルベンチプレスを見てください。
見ましたか?
これが胸筋を大きくしたい人にとって理想的なベンチプレスだと思っています。
動作中ずっと、胸筋が収縮していて、90%くらい胸筋の力でベンチプレスを続けていますよね。
簡単にやっていますが、このすごさがわかりますかね。このフォームで140kgを軽々とやっているんですよ。すごすぎる。
調べたところによると、ジェイ・カトラーは胸筋が苦手な部位だったそうです。
なので、他人の方法は自分に合わないので、自分にとってやりやすい方法を探して辿り着いたのがこのフォーム。
普通のベンチプレスのフォームとはかけ離れていますよね。
通常のベンチプレスはもっとブリッジをして、手幅は広く脇を閉めて、バーは胸に必ずつけて、1回1回挙上するたびにストップします。
一方でジェイ・カトラーのフォームは、手幅は狭く脇を開き、ブリッジもさほどせず、バーは胸につけていない。ストップするのはウェイトを下げたところ(一瞬)
そして、今じゃこのフォームはアメリカのボディビルダーの間ではよく見られるフォームです。
ジェイ・カトラーが起源ではないと思いますが、 ボディビルダーは挙上重量を競うわけではなく、いかに筋肉に刺激を与えるかなので、彼にとってはこれが最適なフォームなようです。
こういったことはなかなか日本では知ることができないんですよね。どの雑誌も全部同じベンチプレスのフォームを紹介してますからね。
結局何が言いたいかというと、
筋肉にずっと負荷を乗せ続けることが大切
ということです。言い換えると、筋肉の収縮を第一に考えるということですね。
今日から「筋肉から一瞬でも緊張を抜かない」ということを意識してみてください。
ベンチプレスが苦手という人は、諦めずにこのアメリカ式のフォームを試してみるのもオススメ。
実際私もウェイトリフティング式のベンチプレスのフォームは全然効かなかったのですが、
私は勝手にこのフォームをアメリカタイプと呼んでいますが、これに変えたところ明らかに胸の形が変わってきたのを感じました。
なので、
アメリカ式のフォームは、めっちゃオススメです。
※そしてめっちゃ筋肉痛も来るのでお気をつけて
まとめ
ハイレップでもすごいボディビルダーはいるし、低レップでもすごいボディビルダーはいます。
要するに、1番大切なのは「もう1回も挙げられない」というところまで追い込むのが筋肥大には大切な要素ということですね。
筋トレは科学。栄養学、生理学、解剖学、心理学など色んな要素が組み合わさった、ある種の学問です。
初めはむずかしいかも知れませんが、知識がついてくるとあらゆるメディアの「◯◯ダイエット」などのブームにいちいち流されることもなくなります。あんなものは一過性のものであり、実際に去年流行ったダイエット方法なんて誰も覚えてないし、実践もしてないはず。
体について正しい知識をつけることは、
生涯にわたってメディアの戦略に惑わされないことにも繋がります。
私が読んで良かったなと思える本
正しい知識をつけるために、私が今まで読んだ本の一部です。
トレーナーの聖書「プロメテウス解剖学」
解剖学を知ることは、ゲームの説明書を読むようなもの。知っておくのと知らないのでは、根本的な理解が違います。
体の仕組みを知ると、自分にとって効かない種目に応用ができるようになります。自分でトレーニングの改善ができるようになると、トレーニングはグッと楽しくなります。
ただ、難点なのは13,000円とちょっとお高いこと…。その分内容はバッチリなんですけどね。
筋トレに直結する知識だけを得たいという方には↓をおすすめします。
手軽に解剖学を知ることができる
監修は東大教授、元ボディビル日本一の筋肉博士「石井直方」先生です。フィットネス業界でもトップクラスの地位にいる方。知らないものはいません。石井先生が監修している本は初心者でも理解しやすく、筋肉や骨が全部イラストでわかりやすいです。この手の本はたくさんあるのですが、選ぶならこれでしょう。手軽に解剖学を知りたいという方にはぴったり。
究極の筋肉を造るためのボディビルハンドブック
名前はボディビルハンドブックとなっていますが、筋肉の構造、筋肥大をするためのトレーニング方法、栄養学、減量方法、コンテスト前の調整方法などあらゆる面からカバーしているので、筋トレについてもっと知りたいという方にはとてもおすすめ。
除脂肪メソッド
脂肪をつけずにバルクアップするためのカロリー設定方法について説明したときに紹介した本です。
自分の体重をコントロールするなら正直これ一冊読むだけで十分だと思います。トレーニングをしていない人向けにもエクササイズが紹介されているので、初心者から上級者までオススメできる一冊。
サプリを知りたいなら絶対これ!サプリメント大事典
グリコのパワープロダクション責任者、桑原さんが書かれたサプリメントについての本。プロテインって何?から始まり、アミノ酸とプロテインの違い、成長ホルモンを自然に増やサプリメント、今流行の成分についてなど、これを読めばサプリメントについてはそこらへんのトレーナーよりも詳しくなれるのではないでしょうか。おそらく5回以上は読みなおしてます。毎回読んでも新鮮。