「有酸素運動をすると筋肉が落ちる」
「筋肉が削れるから走らないほうがいい」
トレーニーの間では有名な話です。
では、本当に筋肉が落ちるのか?
脂肪が落ちにくいために有酸素運動をする人は、有酸素運動をせずに痩せられる人よりも不利なのか?
結論からいうと、そこまで心配する必要はありません。ただ、有酸素運動をやり過ぎると筋肉の成長は遅くなります。
この記事では、筋肉をなるべく落とさない有酸素運動を2つ紹介します。
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そんなに心配しなくていい
「有酸素運動をすると筋肉が落ちるんじゃないか」と心配な人は、ある程度までの量であれば、あまり気にしなくてよさそうです。
とある研究では、「週2回、30〜60分の有酸素と筋トレをしたグループは、筋トレだけをしたグループと比べて、筋力の発達に大きな差は見られなかった」と結論づけています(1)。
また、「有酸素運動をしたほうが、むしろ筋肉が増えた」という研究すらあります(2)。
この研究で被験者は、バイクの有酸素運動を40分間おこない、6時間後に筋トレをしました。これはなかなか長い時間ですね。
結果、有酸素運動をしたグループは、脚の筋肉が14%増え、筋トレだけのグループは8%増えました。
週2〜3回、各30〜40分以内の有酸素運動であれば、過度な心配はいらないようです。
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ただし、やり過ぎは禁物です。
有酸素運動と筋トレを同時にすると、筋肉の成長は遅くなる
いろいろな研究を調べた結果、有酸素運動をすると「筋肉が落ちる」というよりは、「筋肉の発達が(とても)遅くなる」といったほうが適切です。
とある研究で、週に6日有酸素運動、5日トレーニングをおこなったところ、筋力があまり伸びなかったという結果が出ています(3)。
かなりハードなトレーニング内容ですね。これなら筋肉が成長しなくても理解できる気がしますが…。
なお、他の研究でも似たような結果が出ています(4,5)。ざっくり紹介すると、
- A:筋トレだけのグループ
- B:筋トレと有酸素運動運動のグループ
以上の2つのグループに分かれてトレーニングをおこなった結果、次のようになりました。
・ベンチプレス:Aは23%伸びて、Bは12%伸びた
・スクワット:Aは23.4%伸び、Bは18%伸びた
どちらのグループも、ベンチプレスとスクワットが伸びています。このことから、有酸素運動をすると筋肉が落ちるというより、成長が鈍化するといったほうが適切かもしれません。
でもやっぱり有酸素運動をしたほうが脂肪は落ちる
ただし、これらの研究に共通するのは、「有酸素運動をしたほうが、脂肪は落ちる」ということ。さらに、「筋トレだけでは心肺能力はあまり向上しない」ことも判明しています。
つまり、脂肪を落とすことを優先するのか、筋肉を増やすことを優先するのか、目的によって有酸素運動の導入を検討すべきだといえます。
【ミニコラム】筋肉が落ちる本当の理由「栄養が足りていないから」
栄養をまったく取らずに有酸素運動ばかりをすると、筋肉は落ちます。経験上、これは明らかですし、多くのトレーニーが共感してくれるはず。
たまに「基礎代謝以下のカロリーを摂取しているのに痩せない」となげく人に出会うのですが、カロリーを減らしすぎるのは本当におすすめしません。
基礎代謝以下のカロリー量だと、からだは「これは生命の危機だ!」と判断し、カロリーを消費せず溜め込みます。それはどこに溜まるか?脂肪細胞です。からだはエネルギーを脂肪として貯め込むのです。だから、「食事を減らしているのに痩せない!」という人が続出するのです。
では、痩せにくいから有酸素運動をする人は、どうやって筋肉の減少を食い止めたらいいのか?
なるべく筋肉を減らさずに減量したい場合は?絶望するしかないのか?
いえ、そうでもなさそうです。
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インクラインウォーキングよりもバイクのほうが筋肉は削られない
有酸素運動は脂肪を落とすのに効果的です。
ただし、種類はしっかり選んだほうがよさそうです。
トレーニーには、インクラインウォーキング(軽く傾斜をつけての早歩き)が、国内や海外で人気です。
ですが、これでは「筋肉にエキセントリックな負荷がかかるため、ダメージが多く、回復に時間がかかってしまう」という研究も(6)。
エキセントリック:引く動作をするときに筋肉へ加わる刺激。
例)ウェイトをおろすとき、綱引きで耐えているとき
そこで、よく筋トレをする人には、「バイク」を使った有酸素運動を取り入れることをおすすめします。
研究では、インクラインウォーキングよりも、バイクのほうが筋肉が落ちなかったことがわかっているからです(7)。
グループを以下の3つに分けて、実験がおこなわれました。
- 筋トレと有酸素(インクライントレッドミル)
- 筋トレと有酸素(バイク)
- 筋トレだけ
結果
- 筋トレだけをしたグループがもっとも筋力を伸ばした
- 有酸素運動をした両グループとも脂肪を減らしたが、バイクをしたほうが筋力の低下が少なかった
初心者を対象にした実験ではあるものの、バイクのほうが体への負担が少なく、かつコンセントリックな運動が多いため、筋力の低下が少なかったのではと議論されています。筋トレ経験者でも、似たような結果になりそうですね。
コンセントリック:押す動作をするときに筋肉に加わる刺激。
例)ベンチプレスで押す時、力士が突っ張りを入れるとき
長時間のウォーキングよりも短時間のインターバルトレーニング(HIIT)
「筋肉を落とさないために、低負荷の有酸素運動を長時間おこなう」
これはボディビル界ではよく知られていることで、一般的におこなわれています。
ですが、低負荷で長時間の有酸素運動をするよりも、高負荷で短時間の有酸素運動をするほうが、効率が良いことがわかっています。
- 高負荷・短時間の運動:「High Intensity Interval Training(HIIT)」
- 低負荷・長時間の運動は「Low Intensity Interval Training(LISS)」
例えば「HIIT」は、バイクを20秒間全力で漕いで、1分休憩し、それを繰り返すこと。呼吸がとても苦しくなるのが普通です。一方で「LISS」は、ランニングマシンで軽く走るなど、呼吸があまり乱れない運動。
HIITとLISSの効果を比べたメタアナリシス(信頼性の高い研究)では、どちらの効果もあまり変わらなかったと結論づけられています(8)。つまり、HIITのほうが、短い時間でLISSと同じ結果を得られるということ。時間の短縮になります。
さらに、アイスホッケー選手などの上級者を対象にした研究では、「HIITと筋トレをしたグループは、脂肪を落として筋肉が増えた(9、10)」という報告すらあります。
強度は高くなるものの、脂肪も落とせて筋肉が増えるなら、トレーニーにとっては魅力的な話ではないでしょうか?
低負荷・長時間有酸素運動(LISS)が悪いわけではない
もちろん、低負荷・長時間の有酸素運動が悪いということではありません。効率の問題です。
低負荷であるメリットは、筋肉へのダメージが少ないこと。心肺機能を駆使しないので、疲労感が強くないこと。関節への負担が少ないこと。
冬の朝など、体をいきなり動かしたらケガをしそうなときは、低負荷のほうが有効です。
HIIT:短時間で終わるがツラい
HIITのメリットは、短時間で終わること。有酸素運動がキライだけどやらなきゃいけない。そんなとき、短い時間でパッと終えられるのは、大きなメリットです。
また、心肺能力を非常に高めることができるので、スクワットでの追い込みが強くなるなど、コンパウンド種目にも活かせます。
デメリットは、心肺機能に大きな負荷がかかるので、すごくツライこと。下半身の関節に故障がある場合、負担が大きいために断念しなくてはいけないこともあるでしょう。
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脚の日の前後にHIITはしない
脚のトレーニング日に高強度のインターバルトレーニングをすると、脚の筋肉の発達が遅れることがわかっています。
対策としては、脚の日の前後24時間以内には、なるべく有酸素運動をしないこと。こだわるなら、HIITだけではく、低負荷の有酸素運動も避けたほうがいいでしょう。
もし金曜日が脚の日だったら、木曜日と土曜日は有酸素運動はなしにして、違うトレーニングをする。もしくはオフにして、家族やパートナー、自己投資に時間を使ってみてはいかがでしょうか。
個人的には、脚のトレーニング前後は休みにすることが多いです。前日は体力を温存したいのと、翌日は体への疲労が強く、トレーニングのやる気すら起こらないからです。
個人の経験からいうと、やっぱり有酸素運動は必要
私は週に4〜5日ほど筋トレをしており、手前味噌ですが、一般の方に比べると筋肉はあるほうです。
ただ、とても痩せにくい体質で、食事を減らすだけではあまり痩せず…。腹筋のシックスパックが見えるくらいまでなら食事を減らすだけで到達できますが、それ以上絞るとなると、やっぱり有酸素運動をしないと脂肪が落ちにくい。
私のまわりにはボディビルダーが多くいますが、彼らはみな、もともと痩せやすい体質の人ばかり。細い体がコンプレックスだったから、筋トレにのめり込んでいった(狂っていった)人が多い。彼らが口を並べて言うのは、「夜のご飯を少なくするだけ」とか「菓子パンをやめるだけ」など。太りやすい人に喧嘩でも売っているようなアドバイスですね。
結論、減量は体質にとても左右されるため、自分にあったやり方を見つけるしかありません。
伝えたいことまとめ
- 週2〜3回、各20〜30分位内の有酸素運動であれば、筋肉が落ちることを心配する必要はない
- ただ、週5日トレーニングして、週6日も有酸素運動をすると、筋肉の発達は遅れる
- 有酸素運動はインクラインウォーキングよりもバイクが効率的
- 低負荷・長時間の有酸素運動よりも、高負荷・短時間のインターバルトレーニングのほうが効率は良い
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減量中に筋肉をできるだけ落としたくないなら、「BCAA」だけは飲んでおくことをおすすめします。力をそれほど落とさずに減量できますし、トレーニング中のスタミナが持続します。