王者にトレーニングを教えてもらう「ASK THE CHAMP(王者に聞け)」シリーズです。
今回のテーマはベンチプレス。
教えてくれるのは、パワーリフティング日本チャンピオンの「大室豪槻選手」です。
- ベンチプレス83kg級元世界チャンピオン
- 全日本ベンチプレス選手権 優勝4回
- 全日本パワーリフティング大会 優勝2回
- 2018年大阪ベンチプレス(ノーギア)選手権優勝
- ベンチプレス:305.5kg
ベンチプレスの方法やフォーム、気をつけるべき点を回答していただきました。
ベンチプレスを強くしたい人、独学で迷いながらやっているという人は、どうぞご覧ください!
ベンチプレスの基本はやっぱりブリッジ
ーブリッジって、やっぱり高く組むべきですか?
ごうき選手:高いブリッジが理想ですね。でも、実際にはベンチプレッサーの中にもブリッジが低い人はいるんですよ。やすき選手(ベンチプレス元日本王者)のブリッジは高いですけど、僕はそんなに高くないんです。もちろん、初心者さんと比べるとかなり高いですけどね。
(やすき選手のブリッジ)
関連:ベンチプレス元日本王者に聞く、ベンチプレスの基本フォームとポイント
(ごうき選手のブリッジ)
ー(私は)ブリッジが苦手なのでそれを聞いて安心しました。ブリッジのポイントはありますか?
ごうき選手:とりあえず、苦手な人は「アゴを胸につけ続ける」という意識をしてください。高いブリッジをキープできますよ。
ー(筆者やってみる)ベンチのブリッジは苦手です…きっつ…。
ごうき選手:それが正解です(笑)。慣れないうちは、正しいブリッジをすると息が切れます。実は、僕もべンチプレスが1番苦手だったんですよ。
ーえ、苦手だったんですか?
ごうき選手:でも、1番好きでした。練習を続けてたら、いつのまにか1番得意な種目になってましたね。ブリッジが苦手な人は、「どうしたら今よりも高いブリッジが組めるか」を常に考えて、いろいろ試してほしいです。必ず上手くなれるので。
ー体が硬くてブリッジができない人はどうしたらいいでしょうか?
ごうき選手:大丈夫です。体が硬い人でも続けるうちに柔らかくなってきます。ひたすらやり続けましょう!
ーボディメイク的に考えると、「レンジが短くなってしまうんじゃないか」という意見もあると思いますが、どうお考えですか?
ごうき選手:レンジが短くなるぶん、トレーニング量を増やすことができます。どちらにしろ筋力や筋量は増えると思いますね。実際、ベンチプレッサーの大胸筋はめちゃくちゃデカいですよ。
(たしかにごうき選手の大胸筋はジャンプが挟まってるかと思うくらい分厚かった)
- ベンチプレスはブリッジが基本中の基本
- アゴは胸から離さない
- ブリッジはつらくて当たり前
- 「どうしたら高いブリッジが組めるか」を常に考える
力が入るなかで、1番高い位置にシャフトを下ろす
ーシャフトを降ろす場所はどうしたらいいですか?
ごうき選手:理想は、力が入るなかでの1番高い位置に下ろすことです。でも、慣れないうちは難しいと思います。最初は、力がもっとも入る場所に降ろすことだけを意識してください。
あと、「シャフトを下ろす軌道と、上げる軌道は同じ」にするのが理想ですね。
- 最初はもっとも力が入りやすいポイントに降ろす
- シャフトは常に同じ軌道を通る
体にとって、手首は寝かせるのが自然
ーベンチプレッサーは、ベンチプレスのときに手首を寝かせる印象があります。
ごうき選手:人間の本来の動きとして、手首を寝かせたほうが自然なんです。
一度立ってください。胸を張って、ベンチプレスをするように何も意識せずに腕を後ろへ引いてみましょう。
そうすると手首って、こんな感じで自然と寝るんですよ。
(手首は自然に寝る)
こうすると、肩甲骨が自由に動くようになります。
逆に、手首を立ててやってみてください。
こうすると、肩甲骨が寄りにくくなっちゃうんですよね。
ーなるほど…。でも、手首を寝かせると痛める心配がありますが…。
ごうき選手:最初は徐々に寝かせていくといいですね。やっていくうちに慣れますよ。あ、でもどこかの時点で手首に激痛が来るので覚悟はしておいたほうがいいかも(笑)
ーまじっすか……(汗)
ごうき選手:でも、痛くならないコツもありますし、上手くなるにつれて痛みは消えますよ!僕の場合、フルギアで260kgを挙げられるようになった頃、激痛に襲われました。でも、しばらく耐えて、ベンチプレスが上達するにつれて痛みはなくなりましたね。どんな人でも手首が痛くなる時期はありますし、痛くなってから気づくこともあります。時間はかかりますが、努力とコツで痛みはなくなるので安心してください。
- 手首は寝かせる
- 痛みが怖い場合は徐々に
- どこかで痛みと戦う日が訪れる
足幅は人それぞれ
ーベンチに寝たときの足幅はどうしていますか?
ごうき選手:大きく、2つのタイプに分かれます。
- 足を閉じるタイプ
- 足を広げるタイプ
僕の場合は、足は広げたほうが力が入りやすいですね。「やすき選手」は、ベンチ台を挟み潰すくらい足を閉じてベンチプレスをしていますね。
(ごうき選手は足を広げるタイプ)
ーこれもやはり人それぞれなんですね。
ごうき選手:はい。「この足幅だと力が入りやすい」というポジションが誰にでもあるので、いろいろ試してみてください。
- 足を締めるタイプと広げるタイプがある
- 力が入りやすい足幅をいろいろ試そう
肩甲骨を動かすのは上級者レベル
ー以前、やすき選手に教わったとき、「上級者は肩甲骨を動かしながらバーベルを下げる」と知りました。やっぱりごうき選手もそうなんですか?
ごうき選手:僕もそのやり方ですね。ベンチプレッサーでもできる人はそれほど多くないかと思います。
かなり多くの人から「どうすれば肩甲骨を動かせるのか」と聞かれるんですけど、誤解を恐れずにいうと、まだそこまでの段階にいたっていない人が多いです。
ーというと?
ごうき選手:肩甲骨を動かすスキルを習得するまでに、身につけるべきスキルがあるんです。
ー何を身につけるべきなんでしょうか?
ごうき選手:習熟度は人によって違うので、一概に「まずはこれを習得しろ」とは言えないんですが…。
ーそもそも、肩甲骨を動かしてベンチプレスをすると何が良いんですか?
ごうき選手:肩甲骨を動かしながらベンチプレスをすると、体への負担が少ないんです。普通に肩甲骨を寄せ続けてベンチプレスをするより、距離的にはバーベルを下ろす距離は短かくなります。もっと重たいウェイトが上がるし、トレーニング量も増やせます。
ーなるほど…。むずかしそうですね…。
ごうき選手:野球の大谷翔平選手だって、肩甲骨が柔らかいんですよ。あの柔軟性があるから爆発力を発揮できて、あんなに早い球を投げられると思うんです。
ベンチプレスも同じで、肩甲骨はある程度動かしながらやるほうが、力を発揮できます。ただ、これは上級レベルの話なので、習得するにはパーソナルトレーニングを受けたほうがいいと思いますね。
ーたしかに。正直、説明していただいてもよくわかりません(笑)
ごうき選手:だと思います(笑)。肩甲骨を動かしながらのベンチプレスは、難易度が高すぎて文面では伝えきれません。やすき選手や、僕などのパーソナルトレーニングを受けないと本当の意味での「習得」はむずかしいと思います。
- 肩甲骨を動かしながらベンチプレスをするのは上級者
- プロの指導を受けないと習得はむずかしい
腹圧の方法:呼吸は止めない
ーごうき選手はスクワットやデッドリフトで特殊な腹圧のかけ方をしていますが、ベンチプレスでもそうですか?
ごうき選手:そうですね。腹圧はそこまでかけず、体を固めないようにしています。腹圧を固めすぎると、肩甲骨周りが固くなってやりづらいんです。
ー腹圧をかけないって逆にむずかしそうですね。
ごうき選手:感覚なので説明がむずかしいのですが、息を吸い終わると同時にシャフトを下ろすという感じです。そして、押し終わってから息を吐きます。いろんな方法があるとは思いますが、私にはしっくりきてる方法ですね。
- 腹圧をあえてかけない方法もある
まとめ
内容をもう一度まとめます。
- ベンチプレスの基本はやっぱりブリッジ
- もっとも高く、力が入るポイントにシャフトを下ろす
- 手首は寝かせるのが自然
- 足幅は人それぞれ
- 肩甲骨を動かすのは上級者レベル
- 腹圧をかけるとき、呼吸は止めない
パーソナルトレーニングを受けての感想
ごうき選手のパーソナルトレーニングを受けて、改善点を的確に指摘してもらえたのが良かったです。独学でトレーニングをしていると、改善点が自分じゃわかりづらいときがあるじゃないですか。
「ここからどう改善していけばいいんだろう」
「いや、そもそも正解ってなんなんだろう」
と、気づいたら思考がぐるぐる回って結局答えが出ないからとりあえずやる、みたいな…。動画で自分のフォームを撮影しても、ひとつの方向からしか見えないので、改善点を見落としていることもあります。
自分の改善点に加えて、次に習得すべきスキルを教えていただいたので、迷いが消えました。
ごうき選手は中国、四国地方でパーソナルトレーニングをしています。今後はオンラインのパーソナルトレーニングも提供できるように準備中だそう。
パーソナルトレーニングを受けてみたいという人は、ぜひ下記アドレスへ問い合わせてみましょう。
▼ごうき選手のツイッターをフォローする
ごうき選手の記事はこちらもどうぞ
・パワーリフティング日本王者「大室豪槻」選手に聞く、スクワットの方法・フォーム
・パワーリフティング日本王者「大室豪槻」選手に聞く、デッドリフトの方法とフォーム
取材協力:やすきジム(大阪)
ホームページ:https://8sukigym.com/
今回の取材は、ベンチプレス105kg級元日本王者の山下保樹選手が経営する「やすきジム」にて行いました。大阪(弁天町)にあり、人気のパワーリフティングジムです。
くわしくは以下の記事をどうぞ!
・ベンチプレス日本、アジア王者「山下保樹選手」のジムが大阪弁天町にオープン。指導を受けたらベンチプレスの苦手意識がなくなった