前回の「大室豪槻選手に聞く、デッドリフトの方法とフォーム」に引き続き、今回はスクワットについて、豪槻選手に解説していただきました。
トレーニング初心者、中級者、上級者、それぞれ何かしらの学びがあるはずです!
それではどうぞ!
大室豪槻選手:プロフィール
- 名前:大室豪槻(おおむろ・ごうき)
- 身長:164cm
- 体重:82〜84kg
- 年齢:25歳
- 出身:岡山県
- 競技歴:18歳から本格的にトレーニングを開始
- ベンチプレス83kg級元世界チャンピオン
- 全日本ベンチプレス選手権 優勝4回
- 全日本パワーリフティング大会 優勝2回
- 2018年大阪ベンチプレス(ノーギア)選手権優勝
- スクワット:305kg
- ベンチプレス:305.5kg
- デッドリフト:270kg
(フルギア)
豪槻選手は日本記録(83kg)を保持しています(2018年11月時点)
- ベンチプレス:305.5kg
- パワーリフティング総重量:848kg
(フルギア)
パワーリフティングのプロ「ごうき選手」に、スクワットについてたっぷり聞いてきました。
記事の要約
長い記事なので、内容をざっくり要約します。
- 最も安定する場所でバーをかつぐ
- 手幅は柔軟性によって変わる
- 膝はロックする
- 足幅は肩幅より広く取る
- 膝が内側に寄ってもいい
- 目線はまっすぐか、少し下を見る
- お尻は少し後ろに落とす
- ボトムで止めない
- バウンドしない
- 腹圧はかけすぎない
- リストラップで手首を保護する
- 安易に人の真似をしない
プロに聞け!スクワットの全方法
まず、私(筆者)のスクワットフォームを見てもらうことに。
私一人で取材とカメラを担当していたため、自分のフォームを撮影できませんでしたが、私のフォームは典型的なボディビルタイプのハイバースクワットでした。
イメージとしてはこんな感じ。
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(ハイバー=首の後ろあたりにバーを担ぐスタイル)
最も安定する場所でバーをかつぐ
ーど、どうでしょうか?
ごうき選手:かなりハイバーですね。あと、筋肉を使って挙げてる感じが強いです。フィトネスジムでトレーニングされている方は、ハイバーでスクワットをする人が多い印象がありますね。
(筆者はこんな感じでかついでいた)
ーパワーリフティングだと、やはり「ローバースタイル」が多いんですか?
ごうき選手:ローバーというか、肩の後ろ(三角筋後部)と、僧帽筋の中部あたりにバーベルを乗せる人が多いですね。
(肩の後ろあたりでかつぐ)
ごうき選手:単純に、バーと体の接地面が広くなるので、安定します。ハイバーだと、体と接する面が小さいので、ウェイトが重たくなると安定させづらいんですよね。
- バーがもっとも安定する場所でかつぐ
- サムアラウンドグリップで握る
手幅:バーはどこを握ればいい?
ーパワーリフティング選手を見ていると、バーをかつぐ手幅が選手によって違いますよね。あれはどういった基準で決めているんですか?
ごうき選手:肩甲骨の柔軟性によります。肩甲骨が固いと、手を体の中心に寄せられない人もいるんです。あと、階級が上がると扱う重量も多くなります。プレートに近いところで持たないと、安定しないんですよ。
ーなるほど、たしかに。
ごうき選手:手幅に正解はなく、階級や自分の体の柔軟性によって決めるといった感じです。
ーボディメイクだとどうしたらいいですか?
ごうき選手:バーが一番安定するポジションで握るといいですね。おそらく、体重が多い人は広めになるし、軽い人は狭くなると思います。
- バーを握る場所は階級や柔軟性によって変わる
- バーが最も安定する場所を握るべし
バーをかつぐときには膝をロックする
ごうき選手:(筆者の)フォームを見て気になったのは、膝をロックしていないことです。もしかしたら、ボディメイク的なクセなんじゃないですか?
(膝をロックする=膝を伸ばし切る)
ーたしかにそうですね。脚の筋肉に効かせるために、膝は完全には伸ばさない(ロックしない)クセが身についています。
ごうき選手:ボディメイク的には正解かもしれませんが、やっぱりパワーリフティングだと200kg以上は普通にかつぐので、膝はロックしないと危ないですね。
(膝は伸ばし、ロックする)
ーで、ですよねー…(汗)
ごうき選手:骨の構造上、関節同士は、まっすぐになっているほうが安定します。少しでも曲がっていたら不安定になりますよね。それに、膝は伸ばしたほうが疲れにくいですし、僕はかついだときからすぐに膝をロックしちゃいますね。
- 膝はロックせよ(伸ばし切れ)
スタンス:足幅は肩幅より少し広めにとる
ー足幅はどのように決めていますか?
ごうき選手:基本は、つま先と膝は同じ方向を向いて、外側へ開きます。個人的には、これがもっとも力が入りやすいスタンスです。
(ごうき選手の足幅)
ーやはり、内側に重心がかかるのは危険と?
ごうき選手:いや、パワーリフティング選手でも内側に重心が入る人はいますよ。
ーえ、内側に入っても大丈夫なんですか?膝を怪我しそうですが…
ごうき選手:膝は外側へ開くのが基本ですが、その人の重心が内側にある場合、膝は少し内側に寄ります。そういった人って、むしろ膝が内側に寄らないと押しにくいんですよ。
(膝が内側に寄る人もいる)
ーそうなんですか…!筋トレの教科書では絶対にダメと書かれていますが、一概にそうとはいえないんですね。
ごうき選手:もちろん、極端に内股になると怪我をしますが、人によっては、膝が若干内側に入ったほうが、力が入りやすい人がいるんです。
ーつま先の方向はどうですか?
ごうき選手:つま先が正面に向く人もいるので、本当に人それぞれですね。
(つま先が正面を向く人もいる)
ー自分のフォームを模索中の人はどうしたらいいのでしょうか?
ごうき選手:自分のフォームがまだ定まっていないとか、どうしていいかわからないという場合は、やはりスタンスは肩幅くらいで広めにとっておくのがいいでしょうね。
- スタンスは肩幅より広めが基本
- 膝とつま先は同じ方向へ向く
- 挙げるときに膝が内側へ傾くタイプの人もいる
目線はまっすぐか、まっすぐから少しだけ下を見ている
ー目線はどこを向いていますか?
ごうき選手:視線は少しだけ下を見ています。目線を変えているというよりは、アゴを下にすこし引いた結果、目線が下がるといったイメージです。
ー下を見る人が多いのでしょうか?
ごうき選手:基本はまっすぐか、少し下ですかね。でも、真上を見る人もいます。これは自分がしゃがみやすい目線を意識するといいと思います。
ただ、目線を下げすぎるとアゴが下を向いて、背中や腰が丸まりやすくなるので注意が必要です。
(顔を下に向けすぎない)
- 目線はまっすぐ前を見るか、若干下を見る
- パワーリフティング選手の中にはかなり上を見る人もいる
- 視線を下げすぎると危険!
お尻は少し後ろに落とす意識をする
ーしゃがむときに意識していることはありますか?
ごうき選手:お尻を真下というよりは、少し斜め後ろにおろすイメージでしゃがんでいます。そのほうが安定する感覚がありますね。
(お尻を斜め後ろに降ろす)
(筆者はこれを意識してからスクワットの安定感が増したので、強くオススメする)
- お尻は真下ではなく、少し後ろへ下げる
ボトムでは止めず、リズムよく立ち上がる
ーボトムポジションで意識することはありますか?
(筆者の場合、筋肉への負荷を増やすためにボトムで一旦止めて、負荷を感じてから挙上するクセがあった)
ごうき選手:パワーリフティング的にはボトムで止める必要はないので、動きを止めずにスムーズに挙げるイメージでやっています。
(ボトムで止まらない)
ごうき選手:ただし、パワーリフティングのルール上、お尻の膝の位置より下げないと失格です。よって、基本的にはフルボトムスクワットになります。
- ボトムで止めない
- お尻を膝より下げる
膝を伸ばしたときにバウンドしない
ー立ったときに何か意識していることはありますか?
ごうき選手:よく、スクワットで立ったときにバーベルがビヨンとぶれてしまう人をよく見ますが、僕は立った後でもとバーベルを「ビタッ」と止める意識をしてます。
やっぱり、ブレるのは良くなくて、後々のスクワットの安定性に関わってくると思います。
- ボトムでも、トップでもぶれない意識が大切
- 立ち上がった勢いでグラグラせず、バチッと止める
腹圧はかけすぎない
ーやはり、腹圧は強くかけますか?
ごうき選手:基本的にはそうしたほうがいいとは思いますが、僕の場合は少し違います。スクワットで腹圧をかけるとき、レップ直前で呼吸を大きく吸って、腹圧を高めるのが一般的ですよね。
でも、僕の場合、しゃがむ前に呼吸は吸うことは吸うのですが、吸いきる前にもうしゃがみ始めます。イメージとしては、しゃがみながら息を吸っていき、立ち上がるときに息を吐く感じです。
あえて体幹を完全に固定しないという考え方で、僕にはこっちのほうがしっくりきています。
ーその方法は初めて聞きました。
ごうき選手:たしかに、この方法を採用する人はあまり見かけませんね。
ー体幹をあまり固めていない感じでしょうか。
ごうき選手:そうですね。これは僕の考えなんですが、体幹を固定しすぎると柔軟性が失われるというか、体が固くなってダメなんです。
ちなみに、ベンチプレスもデッドリフトも、体幹を完全には固めないようにしています。特にベンチプレスに関しては、腹圧をかけすぎると肩甲骨が固くなって、やりづらくなっちゃうんです。
- 腹圧をあまりかけない方法もある
- どちらも試してみて、スムーズに上がったほうを採用するといい
リストラップで手首を保護
ースクワットでもリストラップをつけますか?ボディメイクだと、スクワットをするときにリストラップを付ける人は、高重量を持つ人以外ではあまり見たことがない気がします。
ごうき選手:そうですね、だいたいの選手はつけてると思います。たまに、「リストラップいらんわ」という選手もいるんですが、それは超上級者なのであまり参考にならないです(笑)
ーやはり、スクワットでもリストラップは大切と。
ごうき選手:はい。僕らは200kg、300kgとかをかつぐので、すこしでも油断すると大怪我につながります。手首が持っていかれないように(潰れないように)必ず保護するためにリストラップをつけますね。
あと、リストラップをつけると、若干ですけどスクワットが軽く感じます。
- リストラップをつけて手首を保護するべし
腰は痛くなる?
ースクワットをやっていて、腰が痛くなることってありますか?
ごうき選手:スクワットはまだまだ下手なので、やりすぎると痛くなることもあります。ベンチプレスではあんまりそんなことないんですけど。
ー(305kg挙げて「下手」とは…)腰が痛くなってしまう場合、どこに気をつけたらいいのでしょうか。
ごうき選手:やっぱり、上手な人がやってるからといって、そのフォームを安易に真似しないことですかね。
ーあくまでも、参考までにとどめると?
ごうき選手:はい。参考にするのは良いと思うんですけど、違和感があったり、どこか痛いなら、そのフォームは自分には合っていないということです。常に修正していくことが大切です。
ーそれぞれに合ったフォームがあるということですね。
ごうき選手:あと、普段の姿勢を正すのも重要だと思ってます。普段の姿勢が崩れていると、スクワットも崩れたフォームになってしまう。体のどこかに負担がきてしまうんです。
(たしかに、ごうき選手の背筋は常にビシッと伸びていた)
- プロでもスクワットで腰が痛くなる
- 上手な人のフォームは参考にしてもいいが、違和感があるならすぐにやめる
- 普段の姿勢から気をつける
まとめ
いや〜、今回もたくさん教えていただきました。
ボリューム満載なので、1回読むだけで完全に理解するのはむずかしいかもしれません。
しかし、今は理解できなくても、3ヶ月後、半年後、1年後などに読み返すと、今回とは違う「学び」があるはずです。定期的に見返せるよう、リマインダーを設定しておくといいかもしれません。
それでは、内容をまとめます。
- 最も安定する場所でバーをかつぐ
- 手幅は柔軟性によって変わる
- 膝はロックする
- 足幅は肩幅より広く取る
- 膝が内側に寄ってもいい
- 目線はまっすぐか、少し下
- お尻は少し後ろに落とす
- ボトムで止めない
- バウンドしない
- 腹圧はかけすぎない
- リストラップで手首を保護する
- 安易に人の真似をしない
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▼また、岡山や広島でパーソナルトレーニングをされています。興味がある方は、下記のメールアドレスに問い合わせてみてください。
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